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福井

なつやまやすぎはかいいのいろまとう

夏山や杉は魁夷の色纏ふ



 「伊吹嶺」の栗田主宰や同人連中の仲間に入れてもらい、福井の永平寺や史蹟、山中温泉近くの 古九谷窯址などを東京の句会仲間と3泊4日の旅を楽しんできた。
 20年ほど前金沢に勤務のおり、何度かは訪れた福井ではあるが、俳句の目で見れば、まったく 初めての土地にきたようであった。

朝倉氏一乗谷遺跡

 午後1時少し過ぎに福井駅に到着。レンタカーでまず朝倉氏一乗谷遺跡に向かう。  1573年信長に敗れ滅びるまで、5代103年の栄華を築いた場所で、現在復元が大々的に行われ ている。
 今回見学したのは、復元された街並みで、商家や武家の土塀などの続く道と第5代朝倉義景が住んだ 館の跡である。
 ここから繋がる山の上に堅固な山城があった。こちらへは、先日来の大雨で土砂崩れなどがあり、 通行が認められなかった。
 町屋の柴垣に囲まれた狭い裏庭や、便所はみんな外にあり、ひどい場所では釣瓶井戸に並んでいたり する。それでもこの地方は水が豊富で良かったので1万人を越える人口を抱えていたそうだ。


   朝倉の復元土塀灼けゐたり
06年「伊吹嶺」伊吹集10月号収載

   柴垣の狭き裏庭赤とんぼ

   夏暖簾並ぶ町家の狭き口

   日盛りや井戸に隣りて外厠



   風通し良き屋の梁にてうなあと

   灼けゐたる復元街道人もなし

   将棋打差す武士人形や夏座敷

   主なき礎石に白き苔の花

 到着したときは、まだ日が高く復元の街並みは大変暑かったが、一乗谷川を渡り、義景の館跡に立つ 頃には、涼しい風も吹き、早くも山には夕影が忍び寄ってきた。
 お湯殿の庭園は、昔の唐風の石庭であったようで、巨岩、奇岩がそのままに残っていた。
 義景の墓の周りには、先日来の大雨のためか、まだ青い銀杏の実が数えきれぬほど落ちていた。 河畔には、当時の姫子や女官の化身か姫女苑が咲き乱れていた。これも印象的であった。
 次に永平寺だけは寄りたいと考え、思いを残しつつ車に乗り込んだ。

   青銀杏朝倉墓所に転び落つ

   水清き一乗谷や姫女苑

   青羊歯やお湯殿址の石の庭    



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