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斑鳩・奈良・柳生(奈良県)

はるのみずかげろうどうのしゆいぶつ

春の水かげろふ堂の思惟仏

2007年6月号伊吹嶺「伊吹集」収載

中宮寺

 斑鳩の地を踏んだのは中学校の修学旅行以来のことである。
 埃っぽい畑の中にあるお寺のイメージしか残っていなかった。
 今回はJR法隆寺駅からタクシーで住宅地を走っているうちに中宮寺の門前に着いてしまった。
 中宮寺の弥勒菩薩は思惟(しゆい)仏として、とりわけ日本人に人気のある仏像であるが、先日の ロダンの「考える人」と偶然東西の物思う像を鑑賞できた。甲乙は付けがたいが、気品とか包容力に 勝る弥勒菩薩像が私は好きに思えた。
 特にこの日、お堂は堂の周りの濠の水が庇にかげろっており、この上ない尼寺の優しげなムードを 醸し出していた。
 築地はどこも古びて、傷んでいた。これより、夢殿、法隆寺、五重塔などを回る。

   斑鳩や明るき尼寺の落椿

   斑鳩の築地の割れ目草青む

   夢殿の宝珠離れぬ春の雲

   尼寺の深き水路や藻草生ふ    

法隆寺


   松の花囲みし空に五重塔

   春の風連子格子の回廊を

   春寒や御堂の梁に焦げの痕

   細身なる百済観音春かなし    

 世界文化遺産の法隆寺を今更説明してもしょうがないが、飛鳥時代の木造建築がこれほどしっかりと 残っていることに驚かざろう得ない。
 特に我が国最古の五重塔は、免震構造となっており、現代の高層ビルにその工法が活かされている そうだ。均整の取れた塔で、あちこちから写真を撮ってきた。左の写真は回廊からの上は弁天池側から 撮ったものだ。
 もちろん、夢違観音や玉虫厨子、八等身美人の百済観音など見るべきものは数限りない。
 ゆっくり見て回り、さらには藤ノ木古墳などぶらつきたくもあったが、奈良まで戻って句会も せねばならぬので、南大門からタクシーを拾い、駅に戻った。
 奈良は猿沢の池そばの旅館。食事の後、各人5句出句で句会。さらに有志で鍛錬会。  句会は酒を呑みながら12時過ぎまで楽しんだ。
 翌日は春日大社で昼食後句会がある。午前中に興福寺、東大寺、奈良公園、春日大社と吟行する ことで床に入った。
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