秋晴れのある日、昼食後「生田緑地」を散策してみた。
句友から「生田緑地」は楽しめると聞いてはいたが、なるほど楽しくかつ広いのに驚いた。
今回はほんの触りを見たに過ぎない。ここも1年を通して吟行すべき場所だと思った。緑地は広大な
自然遊歩道の中に、「岡本太郎美術館」「青少年科学館」「プラネタリューム」「日本民家園」それに
藍染めの体験など出来る「伝統工芸館」などを点在させている。
花も季節ごとに相当見応えのある感じだ。今回は丁度萩がそこら中に咲き零れていた。曼珠沙華、
すすきも見頃であり、その他の山野草も咲いていた。トップはその「萩」の大写しである。
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私は車利用のため、西口駐車場からの散策となった。最初に現れた施設は
「伝統工芸館」であった。
藍染めの原料の蓼藍の花も初めて知り、染め方も並べた甕の藍汁を使い分けながら濃さを決めるなど
教えて頂いた。
(蓼藍の花は「俳句と写真」の秋その三にあります。)
この藍染め小屋もちょっと下った狭間にあるが、さらに木道が奈落の木々に向かい走っている。
なんの予備知識も持たずに来たので、どんな場所に出会うかが大変楽しみであった。下るに従い
藁葺きの集落が見えてきた。
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日本民家園の藁葺き屋であった。木の葉隠れの景は、小学1年の頃の疎開先
の朧気な記憶を再現して見せているような気持ちにさせた。
しかし、この林道には、そこへの入口はなく、次第に遠ざかってしまった。しばらく歩くと
今度は現代的な階段とガラス張りの近代建築が現れた。
これが「川崎市岡本太郎美術館」であった。岡本太郎については、「太陽の塔」で有名であるが、
どちらかと言えば、こけおどしで良く解らない作品と思っていた。美術館の小高い丘には「母の塔」
と題する作品があるが、最初の一見では、「太陽の塔」に似た作品としか考えなかっ
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た。
しかし、美術館で多くの作品と解説などを見聞きするうちに、彼の表現したかったこと、その
表現方法に誤りのない事に気づいた次第である。
原始の心の人間と広大な宇宙との関わり、その喜びなど。たしかに爆発は芸術だ。うまく表現
できないが、確かに彼の作品の中にはそれがあると思った。
突然岡本太郎のファンになって、表の「母の塔」を見た。広大な宇宙に続く青空の中に母は立っている。
子供たちの生き様を、愛の目で、間違った方向だけには行くなと静かに立っていた。
それは永遠の母の姿だ。 |
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しばらく動けなくなって空を見ていた。大自然の美しさ懐の広さに言葉を失っていた。
しかし、その一端でも俳句に著したいと書いてみたがどうであろうか。
塔の反対側のガラス窓には、鰯雲が不思議な空間の絵となってはまり込んでいた。
緑地は後どのぐらいの広さがあるのか?いつの間にかだいぶ時間を食っていた。とにかくまた来ることに
して歩き始めた。しばらく歩くと噴水のある広場に出た。
丘陵の木々を背景にして萩が咲きこぼれていた。萩は至る所に見つけられたが、薄まじりの
ここの萩は特段の趣が感じられた。
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