古都、金沢の街
みんみんや松の影濃き加賀城址 (2003,09)
古都、金沢
飛行機は、もう小松上空に来ていると思うが、先ほどより深い雲の中に入り一向に出そうもなかった。
私がこの北陸の地に初めて来たのは、すでに20年も前の2月のことであった。どんよりした薄曇りの日で
まわりの景色は雪に彩られていた。社命による転勤辞令を受けてのことであった。
それほど仕事一途の人間であったとは思わぬが、企業戦士と呼ばれる年代に生まれた我々は、翌日からは
当然のごとく仕事に走り回った。金沢城も兼六園もいずれ見るときもあろうと考えるだけで、
5年間の在任期間中にのんびりと見た記憶がない。また当時、自分が今のように俳句に親しむなど予想も出来
なかったし、余暇はゴルフや麻雀に、そして夜の香林坊、片町に忙しがっていたようだ。
ふと、こんなことを考えていると、やっと飛行機は雲の下に出た。片山津カントリークラブの上空をすれすれに
飛んで、懐かしい小松空港に無事着陸した。小松空港は金沢と福井のほとんど中間点にある。すぐそばが義経、
弁慶で有名な「安宅の関」である。近頃の話題で言えばヤンキースの松井秀喜の実家のある根上町もそう遠く
ない。九谷焼の窯元が並ぶ寺井町もそうである。
寄りたいところは沢山あるが、2日間の予定であり、市内見所紹介に的を絞り記すこととした。
リムジンバスで約50分で武蔵が辻で降りる。ここには新鮮で安く、金沢市民の台所を潤す食材市場
「近江町市場」がある。
藩政時代からの歴史があるそうで、180軒以上の店が声を張り上げ競っている。この日も店に並べてある
蟹やら甘エビやら全体の十分の一位の部分全部で1万円でよいから買ってくれと叫んでいた。しかし、
商売でもしなければ、とても食える分量ではない。ちょっと関心を示したら8000円にすると言い始めた。
この中の寿司処が美味しいのだが、まだ13時ぐらいで満員であった。
食事の後、ホテルに鞄を預け、行動を開始した。市内の道はだいぶ塗れていたが朝方はだいぶ降った
と言うことであった。
兼六園は明日の予定とし、ホテルの近くから歩くこととし、まずは武家屋敷跡の長町に向かう。
武家屋敷
この界隈、金沢勤務時代も自家用車でよく通ったところであるが、狭く、曲がりくねっており、横には深い
用水がありで冬の雪の多い日などは入り込んだことを悔やむような場所であった。人間勝手なもので、今回
観光目的として歩けば、よくぞ近代都市のど真ん中にこれだけの昔の町並みを保存しておけたものだと感謝の
気持ちすら涌いて来るのだった。
金沢随一の繁華街、香林坊の東急ホテルから尾山町の北国新聞社の裏手に鞍月用水が引かれている。水は
武家屋敷の反対側に走る大野庄用水とともに、犀川から取水されて武家屋敷の生活用水として利用されていた
ようだ。
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