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斑鳩・奈良・柳生

圧倒される大仏殿
奈良の一日
昼過ぎには句会があるので、連衆は朝食もそこそこに旅館を飛び出した。
一時的な現象ではあったが、昨日とはうって変わり春の雪が舞っていた。
猿沢の池から磴を登れば興福寺の五重塔。鹿せんべい屋が店支度をするのを待ちかねた鹿が雪の中を
集まって来ていた。
雪はまもなく上がり、九輪に朝日が煌めき始めると五重塔は小鳥たちに占領されていった。
鹿の糞に注意しつつ、青芝を踏んだ。杜に点在する車飯茶屋もまだひっそりと閉ざされて、椿には
目白、四十雀、頬白など忙しく羽ばたいていた。
そんな朝を鑑真和上の戒壇院戒壇堂に向かって歩を進めた。
神鹿の背ナに消えたり春の雪
2007年6月号伊吹嶺「伊吹集」収載
淡雪の消えて九輪の輝けり
鳥交る五重塔の三段目
春草のいたるところに鹿の糞(まり)
飛火野や茶屋の籬に春の雪
春の日や戒壇堂の砂光る
戒壇院は東大寺本堂の向かって左奥にあるせいか、大仏殿よりははるかに観光客は少ない。
こぢんまりとして落ち着きのある建物だ。四天王像とか見るべき仏像も多いらしいが、あまり時間
もなく、石庭を見て大仏殿に向かった。同道の句友によると、この石は鑑真和上が乗り越えてきた
海の波を表しているのだそうだ。一層の感慨を持って見直した。
大仏殿は中学生の時に見た記憶よりはるかに大きいのに驚いた。江戸時代の再建と言うが、横幅が当初の三分の二だそうで
、その技術にも驚かされる。
中に入って大仏を見上げたら、大きな右手でサインを送っている。何のサインだろうか?
間違っても地球滅亡が近いなんて言うサインであって欲しくないと思った。
気が付けば、春日大社への集合時間に30分を切っている。
連衆揃って正式参拝を行い、直会(なおらい)の昼食を頂き、句会を行うのだ。
何とか間に合って、宮司の説明を聞いていると、神前結婚を済ませた白無垢が記念写真に収まるべく
降りてきた。
傾ぶきし寺の築地や花馬酔木
巫女走る春日大社の梅の廊
古都の夕焼け
句会を終え、連衆とは解散となった。地元の句友と柿の葉鮨の老舗で名残の一杯を酌み、東京から
参加の3人衆は駅前に予約したホテルへと向かった。
ラウンジでコーヒーを啜り、酔いを醒ました後再び街へ繰り出した。猿沢の池から興福寺の塔を
詠み、浮御堂に出る。真っ赤な夕日が崩れた土塀を照らす。1000年の以前、ここにはどんな生活が
あったのだろうか?
しばし、意識は混沌としタイムスリップしてしまった。
春夕焼五重塔を赤らむる
猿沢の池に芽柳風捉ふ
永き日や夕日に燃ゆる破れ土塀
入相の鐘聞く大和春深し
志賀直哉旧居に行く途中、浮御堂(実際はそんな形をした池にある展望四阿)がある池からの
夕焼も素晴らしかった。ちょうど興福寺の入相の鐘が蕭条と響き渡った。
志賀直哉旧居を経てならまちを見学、ネオンの光る居酒屋街へ戻った。居酒屋では、
しばらく俳句談義に花が咲いたが、さすがに疲れも出て若干早めにホテルに戻った。
明日は柳生に行く。