宏樹は私の父である。昭和六十三年三月十四日に亡くなった。
申し訳ないことに歌人としての父のことは、ほとんど解らない。わずかに書斎に和歌に関する書籍も
多くあったこと。土岐善麿氏や中井克比古氏のお屋敷に良く出入りし、何度かお使いをさせられたこと
などが、断片的に思い出されるのみであり、ペンネームさえ知らなかった。
私に渡された僅かな遺品の中に、父の著作物(日本語関係の物)に混じり数冊の歌の雑誌が残されていた。
歌集でも出すべく選り分けてあったものかも知れない。
なお、ペンネームには他に「むとうさつき」あるいは辰男をそのまま使用した物もあるが、すべて歌誌の
通りとして置く。「むとうさつき」は戦後の一時ローマ字推進論者の先鋒であったためのペンネームと思う。
また、漢字は旧字体のあるものはそのまま記すが、新字体で代用する物もあると思う。
ノート数冊もあったが、完成した短歌かどうかも解らないので、これは載せないことにして、戦前戦後の
一時期のものかも知れないが、ホームページ上に遺稿集として整理しておくこととした。
現在のネット上では武藤辰男としての日本語に対するウエブはいくつか検索できるが、武藤宏樹として
の歌人としては僅かに「空白の短歌史」
http://www.ric.hi-ho.ne.jp/motegi0115ys/poet-sogo12.html
に名前を見るのみであった。