生田緑地(川崎市多摩区)

  緑地のあちこちに咲いている萩
 秋晴れのある日、昼食後「生田緑地」を散策してみた。
 句友から「生田緑地」は楽しめると聞いてはいたが、なるほど楽しくかつ広いのに驚いた。
 今回はほんの触りを見たに過ぎない。ここも1年を通して吟行すべき場所だと思った。緑地は広大な 自然遊歩道の中に、「岡本太郎美術館」「青少年科学館」「プラネタリューム」「日本民家園」それに 藍染めの体験など出来る「伝統工芸館」などを点在させている。
 花も季節ごとに相当見応えのある感じだ。今回は丁度萩がそこら中に咲き零れていた。曼珠沙華、 すすきも見頃であり、その他の山野草も咲いていた。トップはその「萩」の大写しである。
 私は車利用のため、西口駐車場からの散策となった。最初に現れた施設は 「伝統工芸館」であった。
 藍染めの原料の蓼藍の花も初めて知り、染め方も並べた甕の藍汁を使い分けながら濃さを決めるなど 教えて頂いた。
 (蓼藍の花は「俳句と写真」の秋その三にあります。)
 この藍染め小屋もちょっと下った狭間にあるが、さらに木道が奈落の木々に向かい走っている。  なんの予備知識も持たずに来たので、どんな場所に出会うかが大変楽しみであった。下るに従い 藁葺きの集落が見えてきた。
蚊遣焚く藍甕並ぶ土間暗し (2003,10)
長い木道の入口  日本民家園の藁葺き屋であった。木の葉隠れの景は、小学1年の頃の疎開先 の朧気な記憶を再現して見せているような気持ちにさせた。
 しかし、この林道には、そこへの入口はなく、次第に遠ざかってしまった。しばらく歩くと 今度は現代的な階段とガラス張りの近代建築が現れた。
 これが「川崎市岡本太郎美術館」であった。岡本太郎については、「太陽の塔」で有名であるが、 どちらかと言えば、こけおどしで良く解らない作品と思っていた。美術館の小高い丘には「母の塔」 と題する作品があるが、最初の一見では、「太陽の塔」に似た作品としか考えなかっ
た。
 しかし、美術館で多くの作品と解説などを見聞きするうちに、彼の表現したかったこと、その 表現方法に誤りのない事に気づいた次第である。
 原始の心の人間と広大な宇宙との関わり、その喜びなど。たしかに爆発は芸術だ。うまく表現 できないが、確かに彼の作品の中にはそれがあると思った。
 突然岡本太郎のファンになって、表の「母の塔」を見た。広大な宇宙に続く青空の中に母は立っている。 子供たちの生き様を、愛の目で、間違った方向だけには行くなと静かに立っていた。
それは永遠の母の姿だ。
「母の塔」静かに聳ゆ天高し (2003,10)
美術館の窓を画布とす鰯雲 (2003,10)  しばらく動けなくなって空を見ていた。大自然の美しさ懐の広さに言葉を失っていた。 しかし、その一端でも俳句に著したいと書いてみたがどうであろうか。
 塔の反対側のガラス窓には、鰯雲が不思議な空間の絵となってはまり込んでいた。
 緑地は後どのぐらいの広さがあるのか?いつの間にかだいぶ時間を食っていた。とにかくまた来ることに して歩き始めた。しばらく歩くと噴水のある広場に出た。
丘陵の木々を背景にして萩が咲きこぼれていた。萩は至る所に見つけられたが、薄まじりの ここの萩は特段の趣が感じられた。
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