小石川後楽園

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梅の後楽園 


 後楽園と言えば何をイメージするだろう。野球場ですか?競輪場ですか?はたまた後楽園は日本三大庭園の一つであり、 岡山にある、とまず考える人も多いと思う。
 今回ご紹介するのは、東京文京区にある後楽園庭園である。この庭園は現在のドーム球場、後楽園ビッグエッグの隣りに 位置している。  たまに遊園地からジェットコースターの歓声も聞こえるが、都心とは思えぬ静かな空間である。
 江戸時代の黄門様でお馴染みの水戸光圀の代に完成した、水戸藩の上屋敷のお庭である。
 庭園の様式は、池を中心にした回遊式築山泉水庭であり、中国の西湖にちなんだ命名や京都の嵐山にちなんだ、大堰川 や渡月橋、さらに紅葉の名所、竜田川などが配置されている。
 なんべんか訪れているのだが、不思議と春に集中してしまっている。草花や木々を見れば、初夏や秋も十分に楽しめる 庭園だろう。  木戸を潜ると最初に目に付くのが、立派な雪吊りをした松である。この日は強烈な青空で一際素晴らしい景であった。

 雪吊の直立したる空真青

 くっきりと紅梅の色空青く


 お茶屋の涵徳亭の横には、寒桜が咲いていた。ロウバイはすでに咲き終わり、山茱萸 も今年は最盛期を終えていた。「俳句と写真」にある、山茱萸は昨年この後楽園で撮したものである。
 左回りに道を取ると、大堰川を渡る渡月橋に出る。しかし京都の嵐山の風情は感じられない。むしろ大きな屏風岩などが 配置され、中国庭園の趣が濃くなってくる。さらに小高い所を上って行くと、清水観音堂跡にでる。
 説明板を一緒に付けておいたが、ここに舞台があったらしいが相当に高いところであり、なるほど清水寺の感じがよくでていると 思った。
 説明板は写真を拡大してご覧頂きたい。この辺は木々が深く、四十雀や目白など種々の小鳥の囀りが聞こえる。


 囀や礎石のみなる観音堂
05年「伊吹嶺」伊吹集5月号収載



 音羽の滝に架かる通天橋を下ると得仁堂にでる。得仁堂は水戸光圀が史記「伯夷列伝」を読み感銘を受けて伯夷叔斉 (はくいしゅくせい)の木像を安置した堂だそうだ。由緒を感じさせる当時の建造物である。
 ここから池辺まで下り、蓬莱島(この池を杭州の西湖に見立て島の名もそれに由来しているのだろう。)を見つつ 沢渡りを通って、林間に入ると右の円月橋に出る。
 この橋も当時のままのもので、中国情緒が感じられる場所である。橋を通して見える空が美しかった。
 春の空映す疎水や円月橋
 庭園ガイドの説明を聞いてないので、良くは判らぬが、八卦堂跡、小町塚などがある。これを過ぎると梅林に出る。この辺り、 藤棚や菖蒲田もあり、その季節も素晴らしい庭園となろう。もちろん桜、蓮、紅葉の季節も十分に楽しめる。
 梅も写真の枝垂れ梅を始め、各種の紅梅白梅が大変綺麗であった。昨年は梅満開のもと、外人さんを交えた大道芸 (下の写真)など の催しも行われており、土日は人は多いが楽しみも多いのではないか。
 松原には九八屋と言う、江戸時代の酒亭がある。亭名の九八は、江戸時代に「酒を飲むなら、昼は九分目、夜は 八分目が適量」と言われていたことに由来するそうだ。気分的には逆の気もするのだが。
 その奥を歩いていると福寿草も芽を出していた。さらに青木の実が 不思議なことにまるで線でも引いたように中途まで赤くなっていた。  大泉水に水尾引く鴨やゆったりと泳ぐ錦鯉を眺め太平の徳川時代に思いを巡らせ、半日を季節季節で楽しんでみては どうだろう。



 煌めきて小波さざ波浮寝鳥

笹鳴や得仁堂の兜屋根

春水を割りて大鯉顔だせり

沈丁花(じんちょう)の香揺れてをり後楽園


吟行日2005,02,12





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