根津神社の躑躅

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薫風や根津楼門の艶めける 


 根津神社は東京メトロ根津駅から5分くらいのところにある。山門に至る小路には昔懐かしい風呂屋や魚屋が今も営業 している。金太郎飴まで売っている。僅かな距離ではあるが楽しめる道だ。
 根津神社はは今から千九百年余の昔、日本武尊が千駄木の地に創祀したと伝えられる古社で、文明年間に太田道灌が 社殿を奉建した。
 江戸時代五代将軍徳川綱吉は世継が定まった際に現在の社殿を奉建、千駄木の旧社地より御遷座し今に至っている。
   そして、楼門、唐門、透塀はじめ権現造りの社殿などは、宝永3年(1706)の建物だそうで国の重要文化財と なっている。東照宮に似た色彩豊かな神社である。
 楼門の人型は随身(ズイジン)と言うそうで、右側は水戸黄門だそうだ。

 この楼門の手前、鳥居を潜ってすぐ左手に神池があった。池の端には山桜であろうか、名残の花びらが花筏となって いた。その向こうには甘酒茶屋の緋の床几などもかいま見えて、何となく良い景であった。
 漱石や鴎外の散歩道でもあったそうだがなるほどと思えた。楼門の左手には、彼らが休んだという文豪の石なるものも ある。

 浮き沈み落花漂ふ神の池

 笙の音の響く根津社や五月晴


 楼門の横手に能舞台にしては少し狭い舞台があった。ここでは舞殿というのだそうだ。辞書によれば舞殿(まいどの) は神楽の舞台だそうである。
 新緑の中に存在感があった。社務所の横を通り、裏に回ると氏子町内の御輿庫が並んでいた。樟の大木の新緑がことの 他美しかった。
 拝殿の横には、正督4年(1714)に造られた立派な大神輿も展示されていた。
 裏門からの参道は露店が並んでおり、定番のたこ焼きやら、おもちゃ屋にまじり骨董品や安い婦人物洋品など普通の 縁日とは毛色の違う店もあり、見て歩きが楽しめた。
 新緑の中や古びし神楽殿

 樟若葉玉砂利映ゆる神輿倉

 躑躅狩露店に足を止めつつ


 唐破風門と透塀に囲まれた拝殿に参拝したあと、つつじ苑に入った。境内の側面の斜面には約50種、3000株の つつじが植えられているそうだ。
 黄レンゲやハナグルマなど珍しいつつじも咲いていた。まだ咲いていないものもあったが、あれは「さつき」なのかも 知れない。
 燃えるような赤い花の中に、小さな艶のある新緑の葉はルビーの中に混ざったエメラルドとも翡翠とも見え、つつじには 悪いが小葉が実に綺麗だ。
 日本の四季は本当に素晴らしい。またこれほど自然の花を愛するのも他国にはないのではないか?
 観梅から始まって、菜の花、桜の花見、躑躅狩が済めば藤、花菖蒲、紫陽花と続く。真夏の向日葵畑、ダリア園。秋は 桔梗、女郎花など七草見物そして紅葉狩りだ。夏の睡蓮や蓮も外しがたい。
 つつじ見物の人混みの中でカメラを覗きつつ、そんなことを考えた。


 躑躅燃ゆ翡翠のごとき葉もありき




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