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高山

 待宵の月が飛騨の山々を照らし始める頃、やっと予約した宿屋にたどり着くことが出来た。
 わらじ(?)を脱いだ飛騨一之宮は、延喜式にも記されていると云う「水無神社」や飛騨一之宮駅前の「臥龍桜」で 有名な所である。
 ここに宿を決定したのは、平湯温泉や白川郷、高山に予算に見合う旅館がなかったことに寄るのだが、料理も風呂も 期待以上のもので大変嬉しかった。
 水無神社は水源鎮護と農業の神を祭っているとのこと。4月の生き雛祭と5月のどぶろくが振る舞われる例大祭は 見応えがありそうだ。また「臥龍桜」は、現役時代に高山に出張の折、列車の窓から眺めたことがあるが立派なもので あった。
 宿の女将が水無神社には、むささびが居ると言う。8時から9時の間に穴から出て飛ぶというので宿の庭下駄を拝借 して出かけた。  小望月はやや雲の多い、雲居の月であったが、神社は結構明るく気持ちが良かった。しかし樹齢800年の神杉からは むささびは出てくれなかった。
 写真の幹の上で少し明るくなっているところが、むささびの穴である。ここばかり懐中電灯で照らしすぎたのかも しれなかった。  夜食は松茸を始めとする茸尽くし、近くの川で獲れた鮎と飛騨牛。熱燗を少々飲んで気持ちよく寝た。
 朝窓を開ければ、清々しい山の遠景と庭には青棗が鈴なり、都会では味わえない気分の良さである。
 そんなわけで、朴葉味噌の朝食を鱈腹食って高山の朝市見物に出かけた。
あおなつめひかりはなちてひだのあさ
   待宵やむささび飛ぶと云う神社

   むささびの洞(ほらあな)照らす小望月

   饗応(もてなし)は茸尽くしや飛騨の宿

   青棗朝日に光る飛騨の宿    

 高山は祭の屋台で有名である。店屋の屋台ではなく、からくり人形を載せた、豪華絢爛な山車みたいなものだ。
 春秋の2回の祭に出すのだが、混むという理由で出張も避けたから一度も見ていない。
 車を高山陣屋近くの駐車場に入れ、朝市を冷やかすこととした。
 なお陣屋は徳川幕府の代官所の遺構で直轄地であったため、重厚なもので葵の御紋付きであった。
 朝市はこの陣屋門前と街の真ん中を流れる宮川沿いの2カ所にある。両方をひやかして、朴葉味噌と七味唐辛子を 土産に買い入れた。
 野菜や果物、おもちゃや土産小物、衣料品や味噌などの食料品、それらを単品で商うおばんやおじん達の露店商いである。
 めずらしい山野草を売っている店もあった。猛毒で有名なとりかぶとも売っていたがきれいな青で、いかにも庭で 咲かせてみたい花である。下の写真がそれである。
 みたらし団子をほおばりつつ歩くのも楽しいものだ。

   朝市の爺のお勧め鳥かぶと

   朝顔や路地に連なる黒き塀

   唐辛子売る朝市女声高し       

 宮川沿いの道を一本奥に入ると、昔ながらの古い街並みが残っている。
 門ごとに朝顔が植えられており、道はきれいに掃かれていた。昭和初期の路地の風情であった。
 1時間ちょっとで高山を切り上げ、国道41号線で白川郷に向かった。後で地図を見て判ったのだが、41号線に沿って 流れるのは宮川であり、富山湾に近づくと神通川と名前の変わる川であった。
 41号線はまた高山本線ともほぼ平行に走る道でトップ写真のような奥飛騨らしいきれいな場所を見ることが出来た。  飛騨古川の先、角川から国道360号線で白川郷に向かった。
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