写真は写真の上でクリックすれば大きくなります。
戻るボタンで元に戻ります。
初秋の浅草(台東区)



秋気満つ五重塔の明るさに
2007伊吹嶺12月号「伊吹集」収載

 台風一過の9月9日、俳誌「伊吹嶺」の東京吟行会が行われた。
 伊吹嶺は本部が名古屋に置かれているため、3ヶ月に一度の割で主宰が先頭に立って関東での吟行 句会を開催している。
 今回は、浜松町日の出桟橋から水上バスを利用、浅草寺を中心に古い浅草を捜してみようとの 企画であった。
 秋とはいえ、残暑は厳しく隅田川はまだ出水あとの土色の水を滔々と流していた。
 観光の定番ルートではあるが、雷門、仲見世、浅草寺から伝法院通り、六区等を吟行して句会に 入った。


   船底を打つや野分の濁り波
2007伊吹嶺12月号「山彦集」入選

   マネキンの真紅のドレスすさまじや

   送南風(おくりまぜ)香煙高く巻き上ぐる

 雷門から仲見世は、相変わらずの混雑。スーベニアショップのマネキンは相変わらず原色の着物 を着せられていた。
 大草鞋のぶらさがる宝蔵門を潜ると、香炉の煙は台風余波の風に大きく回っていた。
 浅草寺に参詣を済ませ、新奥山から六区に向かう。  新奥山には正岡子規の碑の他弁士塚や喜劇人の碑その他浅草に縁の人々の顕彰碑などが集められて いた。「喜劇に始まり喜劇に終わる」と書かれた森重久弥の碑の下には缶ビールを持った人が眠って いた。
 六区の雑踏を背に古着や衣装屋の並ぶ伝法院通りから浅草神社へと戻った。


   喜劇人の碑に酔つぱらひ天高し

   秋うらら古着屋街をひやかせり

   浅草に人力車見る残暑かな


   猿回しに人のまばらや秋日濃し

   秋空や絵馬に合格祈願の字


 浅草神社は日曝しの中にあった。その為か猿廻しが懸命に太鼓を叩くが、まるで人が 集まらなかった。猿も所在なげであった。大学受験子の吊す絵馬に残暑の日がきつかった。
 句会終了後、遠方の連衆を駅までお送りして、川向こうの花柳街入口まで戻り、手前の店で ご機嫌の一杯をやってお開きとした。


   検番の奥まで夕日赤とんぼ

   初鴨や出水濁りの隅田川

   台風過夕日まみれのビルの窓


[了]
吟行2007,09,09

新新「私の吟行地」目次へ
新「俳句とカメラで綴るムーさんの歳時記」へ
俳句とカメラで綴るムーさんの歳時記(トップ)へ