林 芙美子展

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いま輝く林芙美子

 横浜港の見える丘公園の神奈川近代文学館で、林芙美子没後六十年記念の展覧会があった。
 時雨雲が低く垂れ、港の街騒を丘の上にまで響かせているような日であった。昨年暮れに落合の 芙美子記念館を訪れたこともあり、芙美子の生涯を遺稿や遺品 で辿ることが出来見応えがあった。
 本郷南天堂書店の喫茶店でアナーキスト詩人達との付き合いから生まれた、「貧乏詩人の日記」が大正時代 だったこと、「放浪記」の連載が昭和三年から、「清貧の書」が昭和六年で三人目の緑敏との新婚生活をほとんど 忠実に書いたものであることも知った。
 あの下落合の新居は昭和十六年。押しも押されもせぬ流行作家になって作った御殿だ。戦後も「浮雲」をはじめ 多くの作品を残している。努力の人であり、自分をあそこまで人に見せびらかすことの出来ることにも改めて 驚いたのであった。
  冬薔薇の色濃き丘や芙美子展
  貧に耐ふる芙美子の詩稿実南天
  富有柿二つ芙美子の裸婦の胸乳かな
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