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 焚火して水手(かこ)の揃ひの藍法被
 短日や早瀬に水手の竿雫

 この辺は昔海であったところで、石灰岩などもあり、秩父セメントなどが出来ている。鉄分を含んで 紅葉したような岩やとてつもなく大きな石畳、浸食で亀の形の岩などがある。流れは瀬になったり瀞と なったり、変化に富んでいる。

 長瀞や岩ももみぢと錆出しぬ
 錦秋や瀞の川面になだれ込む

 川幅が広くなり、流れの遅いところには落葉が集まってくる。上手いこと風を受ける枯葉は流れに逆らって 遡上した。
 俳句を始めて間もなくの頃、秩父秋の七草寺巡りで長瀞を訪ねた時は船下りをしなかったので、舟から 見る景色は楽しかった。

 風の来て落葉遡上を試ろみぬ
 枯葉散る空に大岩(そばだ)てり

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