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浅草の酉の市(台東区)



おかめ市ギャルの売子の長睫毛
2008伊吹嶺3月号「伊吹集」収載


 一時は浅草に勤務していたこともあり、鳳神社の酉の市の賑わいはよく知っていた。知っている だけに、あの混雑にはまりたくなく、一度も境内まで進んだことはなかった。
 俳句を始めると何でも知っておきたくなり、金は無くとも時間だけは自由になることでもあり、 二の酉を見学することにした。今年は浅草にも縁のある樋口一葉の忌日でもある11月23日であった。
 木枯らしはきついが抜けるような青空の下、入谷駅から国際通りの千束にいたる頃には、はや人で 埋まり始めた。
 同行の友人達とはぐれることは必定と見て、落ち合う場所を決めて人の流れに身を任せた。
 まずは清掃車にどんどん吸い込まれる古熊手の山にびっくりだった。


   古熊手をかりかり喰らふ清掃車

   休みなく幣振る禰宜や冬の月

   白熱灯の温き光りやおかめ市



   からつかぜの空駆けぬくる一葉忌

   威勢よきイケメンの売る大熊手

   最小の熊手求める酉の市

 売り子は法被姿のいなせな漢達と思っていたら、ギャルやら毛糸帽の優男が目立った。 おかめに並んだ、ギャルの現代顔が何とも愉快であった。
 さらには、可愛いおんなの児がおばあちゃんと一緒に懸命に柏手を打っている見世もあった。
 私は神社の小さな熊手を求めるに止めた。富がなければ富をかき集めることが出来ない現状が ここにもあるのだった。ちょっとした熊手は万円札で買われていった。
 下町の句友が求めた切り山椒を口に、例の反省会をするべく居酒屋に行った。
 満月か冬の月が隅田川を照らしていた。


[了]
吟行2007、11、23

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