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初夏の小石川後楽園

   昨晩相当な雷雨に会い、どうなるかと思った6月5日、俳句結社「伊吹嶺」の東京吟行会第1回が後楽園で開催 された。
 よく訪れる後楽園であり、とても句を拾うことは出来ないかと思われたが、吟行が始まればそうも言っておられない。 例によってカメラをぶら下げて歩き始めた。
 梅雨入り寸前の天気ではあるが、昼頃には太陽も輝き、風薫る初夏の庭園となった。となればなったで、言葉を 組み合わせると季語のオンパレードとなってしまう。
 俳句モードに変換のため深呼吸の上一服して気を整えた。
 ふだんは目立たない芝生の上に赤く咲く樹が一本あった。中国豫園の庭園が頭を掠めたが、なにやら極楽浄土も かくや、などと思えた。

 花柘榴真昼の園(その)のただなかに

 夏蝶の縺れ舞ひ落つ芝の上

 水馬の陰踊りゐる水面かな


 今回は右回りで吟行した。
 最初に出くわす史蹟は西行堂の址である。歌碑と一部欠けている狛犬だけの4坪ほどの区画であるが、落ち着いた 雰囲気の空間を作っている。
 この辺りには著莪の花も咲いていた。

 青葉風西行堂の址に吹く

 狛犬の欠けたる足や著莪の花


 この辺は楓が多い。秋には紅葉が美しく、傍の疎水は竜田川と名付けられている。
 今は新緑の楓、花楓でだ。プロペラとも竹とんぼとも云えるピンクの花が空を覆っていた。
 まわりの植え込みは小紫陽花が多い。淡紫色の小花を多数つける。林の下などであまり目立たない花だ。
 木漏れ日や間合ひを埋めし花楓

 散り初むや小紫陽花の薄き闇

 そんな木下闇をぬけると、内庭と呼ばれる独立した庭園に出る。ここは水戸藩書院があった場所だそうだ。
 池は睡蓮の盛りで美しかった。
 大池に遊ぶ軽鴨や甲羅干す亀を見ながら進むと前回紹介の九八屋に着く。檜皮(ひわだ)を張った造りとなっているが、 大名暮らしとは雰囲気の異なる建造物で、町内の庶民の酒亭を四阿(あずまや)代わりに持ってきたものだろう。

 檜皮張る酒亭の壁や梅雨兆す
「伊吹嶺」2005年9月号伊吹集収載


 菖蒲田にもまだ花菖蒲がきれいに咲いていた。その隣は稲田になっており、すでに早苗が植えられていた。
 円月橋はまんまるの陰を映し、その中に小エビ、小魚、ざりがに(蜊蛄)が沢山泳いでいた。
 いつ来ても楽しい後楽園である。

 まんまろき陰に蜊蛄円月橋

 昨夜(よべ)の雨蛍袋を重くせり

吟行日2005,06,05




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