夏 その六

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父子草もどき。季語にはなっていない。荒れ地に生える雑草。大正時代に熱帯アメリカより入ったらしい。花も葉も父子草に似ているが、父子草の花は茎の頭部 にのみ付く。
近頃の親子関係を表しているような、いやな草である。

炎夏かな父子草もどきなど現れて
           光晴
えんかかなちちこぐさもどきなどあれて
うきいおのにわになんきんあやめさく 庭石菖、南京あやめ 季語 夏。芝生の上や荒れ地に自生し、可憐な花を付ける。
このところ庭の手入れも怠りがちであるが、そんな庭に花を見つけて愛おしく感じた。

 憂き庵の庭に南京あやめ咲く
           光晴
鬼罌粟、罌粟の花。雛罌粟と共に季語は夏。
これは鬼罌粟の花で雛罌粟より一回り大きい。

風の来て忽と鬼罌粟揺らぎけり
           光晴

伊吹嶺「伊吹集」2005年8月号収
かぜのきてこつとおにげしゆらぎけり
水木。白い小さな花を階段状に層になって付ける。水木の花で季語は夏。同種の木ではあるがハナミズキ (春の項参照)とは違う。
山の灌木群に混じっている。白い花の層が山の新緑をより一層際だてる。

水木の花山の緑のただ中に
           光晴
ユッカ、ユッカの花。季語 夏。この花は年に2度咲くので季語にはならないと思っていた。初夏と晩夏とするようだ。 北米原産のリュウゼツラン科。香りの良い清純な花だが、葉が針のように尖り、固いのでそばに寄れない。

磔刑のキリストのごとユッカ咲く
           光晴
たっけいのキリストのごとユッカさく
韮(にら)の花。季語 夏。食用にするニラの花である。ユリ科だそうで、よく見ると清楚な花である。芯強く、健気に 生きる下町の美女の感があった。蟻が付いていたが、油虫でもいたのか。花韮は春に咲く別の花。 韮の花を花韮としての句も見かけるが、現代では避ける方が無難だと思う。参考花韮。

薔薇園の片隅韮の花盛り
           光晴

伊吹嶺「伊吹集」2005年1月号収
ダリヤ、天竺牡丹。季語 夏。ダリヤは種が異なると思えるほど種類や色が多い。にもかかわらずともに繁栄している 様はすごい。人類はなぜ仲良くできないのだろう。町田ダリア園にて。

「私の吟行地」町田ダリア園も見てね。
アベリア、花衝羽根空木(はなつくばねうつぎ)、スイカズラ科。
夏から秋にかけて垣根や公園、街路に植えられている低木。

アベリアの垣暮れ残る酷暑かな
           光晴
ポーチュラカ、花滑ひゆ。季語 夏。野生の滑ひゆの園芸種。野生は花が小さく黄色のみだが、各種の色がある。 松葉牡丹と同種。


ポーチュラカ子らの騒ぎはプールらし
           光晴
千日紅(せんにちこう) 千日紅、千日草。季語 夏。色あせしない花で最初からドライフラワーである。


まなうらに終戦の日や千日紅
           光晴


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