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遠ければなほ輝けり夕桜
合同句集「欅」収載
絵の鑑賞とは少し違うが千鳥ヶ淵の夕景を詠んだ。
眼前の桜はすでに日も翳り、薄墨色を濃くしていた。お濠の遠くの桜は夕日を受けて明るく
私の心まで明るくしてくれた。
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春の水影ろふ堂の思惟仏
合同句集「欅」収載
奈良に行った。
中宮寺の弥勒菩薩は永遠の微笑みで私を迎えてくれた。
堂を回る堀には春の日がゆらめき、すべての音を消していた。
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初つばめ病室の窓明るうす
'05年伊吹嶺7月号「伊吹集」収載
妻が乳癌で、手術を受けるため入院した。
病室に案内されると、妻も私もやはり不安になり無口になってしまった。そんなとき、病院の外窓の上に巣作りを
始める、燕が飛んできた。先生や友人の励まし以上に小さな燕は私たちに希望と感謝の気持ちを与えてくれたのであった。
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白梅や句座の玻璃戸を開け放つ
開け放てば、まだ外気は冷たい。でも香りまでも句座に引き入れたくてガラス戸を開けてもらった。
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輝ける運河掠めし初燕
'04年伊吹嶺8月号「伊吹集」収載
燕を見かけるようになると、そろそろ夏が来るな、と感ずる。毎年見る光景であるが、その頃になると、知らず知らずの
うちに燕を探す自分に気づく。つばくらめ、つばくろ、燕来る、初燕などが季語となっている。 |
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初蛙団地の窓の灯りだす
現在の季節感だと、蛙が鳴き出すと初夏の爽やかな夕べを感じるのではなかろうか?歳時記の上では、蛙は春なのである。
確かに蛙の大合唱の始まる頃、まだ田には水が張り始めたばかりであった。
雨蛙、青蛙、蝦蟇蛙などとすると夏の季語となる。
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