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バスで箱根の花見?



春疾風けむり底這ふ硫黄谷

大涌谷にて


海ほたる経由、東京湾を渡る



 上総一宮発の箱根巡りの観光バスがあった。ほとんどのバスがこの一宮発は大変少ない。
 今年の桜前線の速度は昨年より遅そうだし、うまくすれば桜も見れるかも、と申し込んだ。
 朝七時の集合では、天気もまあまあで、俳句の基本、見た物を詠む、が実践できそうであった。
 車窓には、朝から畑を耕す人の姿や、竹林や水を張ったばかりの田圃などが見えた。
 アクアラインに入ると、少し霞んではいたが、富士がはっきりと見え、シャッターをきった。ただ風が強いのには驚いた。
 車は湾岸道路から大黒埠頭を見て、横浜青葉インターから東名に入った。
 御殿場の料理屋で少し早めの昼食を摂り、箱根へと向かった。  箱根路はまだ桜も多く遺ってをり、椿や馬酔木の花、低木には山吹、連翹、満天星躑躅などが見られた。
 その他、箱根神社では、柊南天、躑躅も所々に咲いていた。
 桜は近くで見ると満開を過ぎた木々ばかりであったが、車窓から眺める山桜や芦ノ湖に浮かぶ花屑は十分観賞に堪える 物であった。
 バスは薄の芽で真青の仙石原を進み、目的地の一つである大涌谷へと向かった。
 残念だったのは、雄大な仙石原の新緑の薄を写真に収められなかったことだ。こんな時、俳句はやっていて良かったな と思わせて呉れる。どこまで理解して貰えるかは問題であるが。

    遠近に煙大小春の耕

   トンネルを出てさはさは竹の秋

   水鏡となりし田の面に春の雲

   残雪の富士輝けり湾の上

   のどけしや波戸のクレーン首長し




 元箱根にでて、海賊船の出航を見送り、箱根神社を参拝する。湖に張り出す鳥居も見たが、近くは外国人の観光客が 多くて、写真も諦めた。
 参拝後は、箱根関所跡を見て、一号線を箱根町、湯本、早川へと下った。
 箱根駅伝の一番の難所であるが、角角には山吹の花が眩しかった。
 最後の目的地が、蒲鉾の鈴広。買うつもりも無かったが、それでもあれこれと結構な重さになってしまった。
 団体旅行で、欲しい写真は撮れなかったが、深山桜の花見が出来て、一応成功の吟行となった。
   駒返る草仙石原はうねる

   ハイウエイ駆る目に優し芽ぐむ山

   ほつほつと雲湧く如し残る花

   笠雲の富士の威厳や春遅々と

   花屑を分けて出航海賊船      
24年伊吹嶺誌7月号風光集収載



   柊南天箱根神社の百磴に

   躑躅燃ゆ箱根関所へ続く路

   頂に雲置く富士や夕桜

24年伊吹嶺誌7月号風光集収載

   夕の日に白際立たせ花馬酔木

   入相に映ゆる残花や箱根山

24年伊吹嶺誌7月号風光集収載

   山吹や駅伝駆けし九十九折

   料理屋にかつを幟や初鰹


[了]
吟行2024,4,16

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