犀川の「桜橋」から「犀川大橋」にいたる間の緑地を「犀星の道」と呼ぶ。 今回は時間が無くて寄らなかったが、川向こうが寺町であり、有名な忍者寺もその一角にある。 「犀星」も「鏡花」も「秋声」もあまり読んでないのでここでは語ることも出来ない。これを機会に纏めて 読んでみようと思っている。ここの碑文は「あんずよ花着け」であった。
ここからバスで金沢の繁華街、お城などの反対側にあたる橋場に向かった。この辺も超一流の割烹が あるところだ。 「加賀の女」を口ずさみながら浅野大橋に出た。浅野川は友禅流しでも有名である。橋を渡り細い路地を 右手に入れば、ここも不思議な空間が現れる。紅殻格子の旧郭街だ。
金沢の郭は、この「ひがし」と「にし」の二つに分かれている。両方ともに寺町の側にある。
在金中に「にし」は太鼓を叩いて遊ばしてもらったことがあるが、「ひがし」はなかった。未だに 「ひがし」の方が格が高く、一見さんはお断りだそうである。ただ見学できる楼と甘味処などに変わって営業 しているところもあるので、中の構造を知ることは出来る。「ひがし」も「にし」も寺の多い一角の近くにある。 遊郭と寺の関係は何だろうか?考えてみると花柳界の隠語には抹香臭いものばかりだ。ご存じの方はお教えください。
まだ日はあったが、三味の音も聞こえ、一句をものして浅野川に戻った。
木造の「梅のはし」を渡ると、「鏡花の道」に出る。すぐ左に鏡花の「滝の白糸」碑そのまた左に水芸の滝の白糸 大夫像がある。正面に手を翳すと水芸が始まると書いてある。翳しても水は出なかった。壊れているのかと 像を一回りした、その時水が降ってきた。驚いた。これでは濡れ鼠になる人が多かろうと再度試したが、 二度と水は出なかった。
この晩は在金沢時代の苦楽を共にした仲間との再会が待っていた。東京、大阪、地元北陸の各地から20名ほどが 参加しての宴会となった。
男は大半が職を終え、第2の人生を謳歌している。女は、みな若き日の艶を持ちつつも一家の中心にでんと 構えている姿が想像された。全員和気藹々のうちに当時の年代に戻り、飲みかつ食った。この割烹も良く来た店 ではあるが、ご主人や女将にまで名前まで覚えてもらっていて嬉しかった。2次会まで全員参加、酔いつぶれて 寝たのであった。
石川近代文学館
朝、ホテル9階からの眺望は金沢には不似合いなぐらいの明るさに満ちていた。自由な時間は午前11時まで。 まずは香林坊に近い、「石川近代文学館」に寄る。
まだ8時前なのに快晴のせいか非常に暑い。この建物は、いつから文学館になったのか。金沢にいた頃は 文学など、小説を読むことはあっても、自分が俳句なぞ作ろうなんて気はさらさら無かったので気づかなかったのかも 知れない。中には時間が早すぎて入れなかった。
なお、この赤煉瓦は国の重要文化財に指定されているそうである。
香林坊から丸の内のあたりが大変変化しており、金沢市にいたと考えられぬ気分であった。ここからゆっくりと 10分もあるけば広坂である。兼六園はいくつか出入口があり、その一つがここにある。
入口の名前は真弓坂口と言うらしい。金沢に居たことがあっても、仕事のエリアは能登半島が主力であったのと、 近い観光地ならいつでも行けると思っていたのが原因だが、今回でまだ二回目、恥ずかしいしだいである。
兼六園
ご承知のように、金沢兼六園は、水戸偕楽園、岡山後楽園と共に日本三名園の一つである。
それぞれ、庭園として広大であり、素晴らしい景観を持っている。特に兼六園は、 四季いつでも異なる美しさと曲水、池と言う水回りの美しさは1番の気がする。人それぞれかも知れないし、 岡山後楽園はもうずいぶん訪ねていないから忘れている部分もあるかも知れないが。
おそらく誰もが一番見慣れているのが、冬の雪吊りの景観だろう。そしてその横にある徽軫灯籠(ことじとうろ) だと思う。やはり兼六園と言うより金沢のシンボルかも知れない。
商売の写真屋も、朝早くから機材を良いポイントに置いていた。まだ朝の内だったので人の居ないところが 撮れたが、一般の観光客がここで人物を入れて撮るのも、誰も居ない写真も大変難しいことだろう。
曲水に沿って歩くと流れも速く景色も変わり楽しい。また、重要文化財の成巽閣(せいそんかく)、時雨亭、 夕顔亭などの建造物も本来はゆっくり見るべきだろう。建造物に入ることは時間的に出来なかったが十分に兼六園 の一人旅を堪能し、蓮池門から兼六園下に抜けて急いでホテルに戻った。
曲水は豊かな水が流れ,雁行橋ほか、幾つもの橋が架かっている。朝日が美しく煌めいていた。
園内は大きな松の木が多い。さらに姿形もすばらしい。
園内で唯一外の景観が楽しめる場所。
内灘の海の向こうに能登半島が横たわる。
九谷焼の窯元がそれぞれ土産物店を出している。
観光バス御一行様の関所である。
金沢は狭い街である。しかし、見るべきものはまだまだある。また、近辺の片山津などの温泉郷、能登の冬景色、 輪島塗や九谷焼の作業場見学など数日滞在して足を延ばせばますます楽しい旅になる筈だ。
金沢にいた時にもっともっと歴史や自然を知れば良かったが取り返しはつかない。でも馴染みのある場所と 言うだけで、土地勘方向感があったのは助かった。
いつの日か、晩秋の能登,雪の永平寺など再訪出来ることを願いつつ機上の人となった。
萩の花能登路遙かに海の上
秋夕焼軒先浅き郭街
名園の松捻れをり秋の蝉
加賀の城ガイドの声の澄みにけり
秋興や北陸古都の一人旅 光晴
北陸の古都 金沢 完
徘徊紀行へ戻る
トップページへ戻る