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夏の美濃戸口逍遙



夏霧の上る早さや八ヶ岳の朝
「伊吹嶺」伊吹集12月号収載


美濃戸口別荘

 台風10号が日本列島に近づきつつある7月29日、大学の大先輩であるNさんの別荘に向かった。
 もちろんNさんは、私のプロフィールにあるようなふざけた学科とは違いまともな学科に席を置かれていたことを 付け加えておく。Nさんの奥様が俳句歴の長い方であり、そんな関係からご招待を戴いたのである。
 八ヶ岳登山の玄関口、茅野に着くと台風の関係か少々天気は怪しくなってきていたが、夏山らしい風と夏登山の姿の人々が私の 肌に目に飛び込んできて、夏山の若き日の思いを蘇らせてくれた。
白樺に朝霧流る厨(くりや)窓 (2004,07)  信州にきた以上美味しい蕎麦をまず食べたい。Nさん推薦の手打ち蕎麦処更科に足を向けた。
 数量限定の十割蕎麦を注文、喉ごしもまずまずの美味しい蕎麦であったが、香りが少々弱い。出汁ももう一工夫あれ ば最上クラスになるだろうと思われた。
 小一時間バスに揺られて美濃戸口に着いた。
 美濃戸は、八ヶ岳の主峰、赤岳への登山口である。赤岳は標高2899メートルで、美濃戸口あたりで1500メートル くらいの標高となるようだ。
 茅野駅に降り立ったときすでに空気の美味さや涼しさも感じたが、ここははっきりと高原の佇まいであった。
点在する別荘の中には、永住される方もいるとのことだ。冬はマイナス20度くらいになる こともあるようで冬の自然も魅力ではあるが、私は遠慮したいと思った。
 Nさんの別荘はバス終点から歩いても20分程度のところにあったが、奥様が車で迎えにお出で戴いていた。
 三方白樺や落葉松で囲まれたダイニングルームで旅の疲れを癒していると、どうやら雨は上がっており、曇っては いるが散策日和となっていた。
 いたるところに高山植物が咲いている。喜び勇んで片端からシャターを切りまくったのだが、ここで大きな失敗を していたことに後で気づいた。
吾亦紅(われもこう)稜線しるき八ヶ岳 (2004,07)「伊吹嶺」伊吹集11月号収載  無精にも、重い思いをしてまで持参した三脚を、腕を過信して持たずに出てしまったのだ。露光不足は計算していた のにカメラブレを忘れていた。これからはきちんと三脚も使用する気で今はいる。そんなわけで、せっかくの写真が アップ出来ないものもあるし、アップしても若干甘いものがある。ご容赦願いたい。  左の写真は高原の定番、吾亦紅(われもこう)である。翌日は良く晴れて、月見草(待宵草)と吾亦紅が靡く高原 から、八ヶ岳(やつ)の連山が青空に殊の外くっきりとしていた。
 そのときの写真は月見草など近くに焦点を当てるため、深度を浅くしたため上手く撮れなかった。これも反省である。


    いよよ急く野分の雲や八ヶ岳 光晴
 


独活(うど)の花暫し別れむ俗世間  八ヶ岳山麓の高原は、高山植物や山野草の宝庫である。宝庫でありすぎて私には判らない花も多い。これも独活(うど) の花ではあるが、ことによると山独活かも知れない。食べることはあっても花を見るのは初めてであった。
 独活の大木などと言うが、それほど大きくはないが、たしかに役には立ちそうにない木ではある。
 このホームページを作るにあたって、大変苦労しているのは、植物の名前が判然としないことだ。似ている花も多く、 各種図鑑を見るほど迷ってしまう。図鑑やネット検索で簡単に名前の特定は出来るだろうと考えていたのはだいぶ甘かった。
個人のホームページでは、間違った花の名前のものも散見された。このホームページも当然間違いがあると思うので、そんなときは是非 お教え頂ければと思う。

    朝の日や白樺光る避暑の径  光晴

 この晩はNさん肝いりの歓迎パーティーで、信州名物の馬刺しを腹一杯戴いた。酒はもちろん、これまた信州の銘酒「 真澄」が用意されていた。奥様達と夜遅くまで俳句談義に花を咲かせて眠りについた時はかなり夜も更けていた。クーラーの冷気と違い、本当に ぐっすり眠れるのには驚きであった。お陰で朝早く目覚めると、窓の外の白樺と落葉松の疎林には秋を思わせる、朝霧が 流れていた。

八ヶ岳の植物

シモツケソウ ザリコミ
しもつけ(下野)。季語は夏。俳句では繍線菊と書くこともある。香の良い花である。最初に発見されたのが下野、現 栃木県であったことに由来する名とのこと。 ザリコミ。瓦礫に生えるぐみから砂利ぐみに、さらになまったらしい。しかしグミ属ではなく、ユキノシタ科 スグリ属である。したがって俳句は「すぐり」として良いだろう。季語は夏。
やまおだまき くがいそう
やまおだまき。無季。八ヶ岳では白が多いそうだが、他の高地では小豆色が多いらしい。別荘地のいたるところに 咲いていた。 くがいそう。漢字では九階草と書く。無季。輪生する葉が、しばしば九階建てになることからの命名だそうだ。
つりがねにんじん あかつめぐさ
釣鐘人参。可憐な花であるが、名前が長い。この花は結構低地でも咲いている。静岡の日本平でも見た。無季。 赤詰草。明治時代に牧草としてヨーロッパから輸入したらしいが、今では至るところでお目に掛かる。白詰草 のクローバーとほとんど同じだが、輸入時期が少々遅れた(クローバーは江戸時代)ためか、季語とはなっていないようだ。
ハクサンシジャン ソバナ
ハクサンシジャン。釣鐘人参と同じ桔梗科。無季。 ソバナ。桔梗科。無季。左のハクサンシジャンとともに釣鐘人参の変種とも云える。でも同じ地域に これだけ別れた種類があるのも珍しい。
のあざみ キンミズヒキ
ノアザミ、夏薊。季語夏。高原に似合いの花だ。単に薊の花や野薊だけで詠むと季語は春となる。
私的には薊のイメージは夏だ。
キンミズヒキ。無季。赤や白の水引という草の種類とは違うようだ。 群れて咲いてはいなかった。


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