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  東御苑



日を受くる巽櫓や御代の春


 今年は桜が早かった。東御苑の桜も、寒緋桜は咲き終わる寸前。彼岸桜や枝垂れ桜や天城吉野は満開、染井吉野が 3分咲きといった具合で、良いお花見吟行となった。
 昨年正月に吟行したときは、あまり写真も無かったのでアップしなかったが、その時の写真と俳句もこの中に入れて 見た。
 下の噴水公園までが、昨年の正月のものである。左は、同心番所である。

 木枯や同心番所の楠騒ぐ

 火の気なき同心番所冬深し

 江戸城の天守閣址石温し

05年「伊吹嶺」伊吹集4月号収載
 日当たりに大鰓だす寒の鯉
05年「伊吹嶺」伊吹集4月号収載
 春の虹噴水口に現はれり

 大寒やクレーン高き大東京

 芹芽吹く疎水に映る空の下
 今回は竹橋駅に集合、北桔橋門から入った。地下鉄を出るとすぐのお濠端には、しだれ桜や寒緋桜が満開であり、石垣 には、菜の花が石の隙間に見事に咲いていた。
 振り袖火事で焼け落ちた天守閣の礎石前には、山桜色で花の大きな天城吉野が素晴らしかった。どことなく寂しげな 花が盛りであるのは、一際思いの深くなる物である。
 天守の礎石には、黒い煤のあとのようなしみが着いている。当時の火事の名残なのだろうか?
 椿を始め三椏、土佐水木や日向水木、山茱萸、辛夷、馬酔木など花木はみな花盛りであった。
 待人や垂れ桜の影揺るる

 濠垣の隙に菜の花明かりかな

 喧噪を万朶の桜無縁とす

 咲き初むる花に姦し鵯の声
 鳥雲に天守礎石の黒き浸み

 大奥の石室覆ふ蕗の薹

 囀や木の間隠れに御所の屋根
06年「伊吹嶺」伊吹集7月号収載
 本丸跡から富士見多聞櫓のちょっとした高台からは、吹上御所の緑の屋根が僅かに見える。その近くの石室は大奥の 非常の場合の物置であったとのことだが、その上は蕗の花に覆われていた。その先に、忠臣蔵で有名な松の廊下跡がある。 と言ってもここがそうでしたと書いた物があるだけであるが。
 百人番所、同心番所の史蹟を見て二の丸庭園、二の丸雑木林を散策。このあたり、土佐水木や日向水木、木五倍子(きぶし) など も多く、きれいであった。五月になれば花菖蒲の名所となるところだ。
 春蘭、貝母(バイモ)富貴草なども咲いていたがこれらは俳句と写真に入れた。
 落ち椿一輪松の廊下跡

 休日の陽はゆつくりと土筆の秀

 自動車に風やはらかし柳の芽
 東御苑は東京駅から10分も歩かない場所にある。現役時代、会社は目と鼻の先にあったのであるが、来ることは なかった。ここも花なども多く、いつでも楽しめる場所だ。俳人にかぎらずぜひ散策して欲しい。
 特に休日は自動車も少なくたいへん閑かである。
濠端の芽柳が微風に揺れていた。

[了]

最終吟行日2006,3,26



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