神代植物公園と深大寺

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  外国(とつくに)の見慣れぬ蓮や秋うらら(2003,11)

外国の見慣れぬ蓮や秋うらら (2003,11)

神代植物公園

 先日、三鷹在住の句友に誘われて深大寺と神代植物公園に行ってきた。
 JRの駅を降りた時は小雨が降っていたが幸いなことに植物公園に着いたときは雨は上がっており、 靄った武蔵野の風情ある景色まで楽しむ事が出来た。
 車椅子のお年寄りの一団もちょうどバスで着いたところであったが、みな笑顔で園内を回っていた。
ばら園を小春日和の車椅子 (2003,11) この植物公園は、紅葉にはまだ少し早かったが、入口の懸崖菊や大輪の菊花と秋の薔薇、それに 温室の蓮を始めとする珍しい外国の花は、大変素晴らしいものであった。
 このページのトップの写真がその蓮池だ。  神代植物公園は都立の公園であり、いわゆる植物園ではない。元々は東京都の道路や公園の 植栽のための苗床みたいな場所であったらしい。何はともあれ476,637uの土地に広がる 季節の花は見事であり、見応えがあった。
 パンフレットによれば、梅、福寿草、椿、山茶花、桜、つつじ、藤、牡丹、花菖蒲、えびね、 石楠花、萩、その他山野草などなど咲くようで、年に何度も来て吟行するには、打って付けの 場所の一つと言えそうだ。
薔薇園の黄色極めし片時雨 (2003,11) 昏れ急ぐ雑木林や時雨雲 (2003,11)

 もう後数日もすれば、紅葉も盛りとなりもう一つ見所も増える所だが、手入れの良く行き届いた 管理と、その種類、数の多さで十分楽しめた。さらに大きな温室館も見事であった。
薔薇の露ヴィーナス湯浴みの雫かと (2003,11) 南国の蓮。蓮の花はほんとに天国の花の感ありです。

 二時間近く園内で句を拾いつつ大きな薔薇の花や珍しい南国の蓮などを観賞した。裏門から 武蔵野の面影を残す雑木林を抜ければ深大寺へ出る。
 昼時と言うことで、まずは有名な深大寺蕎麦を食べることとする。最近は都内や我が家の近くでも 美味しい蕎麦屋が増えてきて、蕎麦大好き人間の私には嬉しい限りなのだが、案外昔から名物と されている場所の蕎麦が名前倒れになる傾向が見られ、遠くまで食べに出かけてがっかりする ことがある。
 句友推薦の蕎麦屋は裏門を出てすぐ右側の店であった。十割そば、があった。迷わず大盛りを 頼んだ。出汁もしっかりしており、美味しい蕎麦で安心した。
 桜落ち葉の舞う縁台で深大寺そばを堪能した後、深大寺と深大寺城址、水生植物園を吟行する ことにして出発した。

深大寺

 深大寺は、都内では浅草の浅草寺に次いで古い寺だそうで、733年の建立だそうだ。  本堂は最近建てかえられたようであったが、庭の石仏や墓石は相当の歴史を感じさせるものが あった。
深大寺ほとり目当てや走り蕎麦 (2003,11)  深大寺は私が子供の頃から良く名前を聞くお寺であったが、必ず蕎麦が話題の中心となる寺で あった。私も何度か来てはいるのだが、蕎麦以外は記憶の外であった。と言うより俳句に親しむ 以前は神社仏閣を熱心に見て回る事など無かった訳である。
 そして、これも吟行するようになって初めて気づいたことだが、神社仏閣には大変句碑や歌碑が 多いことである。
 この深大寺にも十一の先達の句碑があった。
 下の写真は、この寺に墓もある、石田波郷とその弟子の星野麥丘人の師弟句碑である。
 「吹き起る秋風鶴を歩ましむ」波郷
 「草や木や十一月の深大寺」麥丘人
である。
遠近(おちこち)の出会いの句碑や冬温し (2003,11)  「象潟やあめに西施の合歓の花」 芭蕉
 「遠山に日の当たりたる枯野かな」 虚子
 「万緑の中や吾子の歯生え初むる」 草田男
などの名句、深大寺縁の句などである。
 句碑を巡り、参詣の後門前の仲見世に出ると、ここは境内以上に混雑繁盛の趣であった。深大寺 そば、饅頭屋、楽焼き、おみやげ屋などが軒を連ね客を呼び込んでいた。
 なお平成十三年の年賀切手五十円の意匠は、ここの楽焼き店の「深大寺土鈴」だそうである。
 ここの仲見世の風情もしっとりしていて、浅草などと違うものを感じた。
 深大寺の路一つへだてた所に水生植物園がある。花菖蒲や河骨、睡蓮などが主とは思い、今の時期 それほど期待はしていなかったが、枯れた湿原の木道や、蒲の穂や釣舟草の群落はうれしい景色で あった。
 ここから少し上った小高いところが深大寺城址である。石垣の一部が残っていたが特に見るべきものは ないようであった。
手水舎(ちょうずや)の水の勢ひ秋深む (2003,11) 饅頭の湯気吹き上ぐる紅葉茶屋 (2003,11)


 上の左の写真は深大寺の手水舎である。こんなに勢いよく水の流れている手水は珍しい。 この豊富な地下水が深大寺そばを美味しくし、有名にしたのだそうだ。
 幾つかの句も拾い、美味しい蕎麦を満喫した深大寺は、やはり四季を通して見たいところである。 俳句をやらない人にも楽しめる近郊の穴場としてお勧めする。
 なお「俳句と写真」秋、夏にも薔薇、釣舟草、仏桑花を句と共に追加した。
 今回は、ご案内頂いた句友ご夫妻にご自宅への招待まで受け、ご馳走になった。感謝を付け加えて この項を置く。
交通:JR三鷹駅、吉祥寺駅、京王線調布駅からバスで神代植物公園前下車。
   いずれも各駅から二,三十分です。月曜休園(詳しくは東京都のホームページを)
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最終吟行日2003,11,03





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