六義園

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息もせで見つむる人や櫨紅葉 


 都内の街路樹もようやく色づいて来たようだが、六義園はまだ庭全体がもみじするまでには、 いっていなかった。
 それでも、真っ赤な櫨の木、黄色の萩の揺れる様、欅の色づきなど秋の六義園を堪能出来た。
 六義園は、山手線駒込駅から5分ばかりの場所にある。
 1702年(元禄15年)に時の川越藩主、柳沢吉保が造園した回遊式築山泉水である。その後、 三菱の岩崎弥太郎の別邸となり、東京市に寄贈され、1953年には国の特別名勝に指定されている。
 各所の景は、和歌にちなんだ名前が付けられている。
 花木が多く、秋ばかりでなく1年中楽しめる庭園だ。

 水尾ひとつ紅葉の映ゆる水鏡に

 菊日和茶屋の床几の緋毛氈

 餌をせがむ鴨大口の鯉に乗る

 ゐのこづち蔓延る吟花亭の跡

いのこずちはびこるぎんかていのあと  つつじ茶屋とか滝見の茶屋とか今でも残っているのか再現したものかは判らぬが、吟花亭と芦辺茶屋 は跡地としてある。
 このような場所に佇めば、これも感ずるものはある。
 また、池沿いの道から木立の道にはいると、藪茗荷や、紫式部など低木にきれいな実を見つけることが できた。
 ひよどりは高い木の上から何か赤い実を落としてくれた。大きなどんぐりの実も落ちてきた。


 赤き実を一つ零して鵯翔てり

 藪茗荷蛇の目のごと光をり

 膨らむは風を捉へし萩黄葉



 秋蝶の落ちなむとしてまた高し

 冬の日に暴ききられし池の底  

 どんぐりの音に足下を見回しぬ

 油絵のごとき水面や紅葉映ゆ  

 六義園は学生時代以来であった。
 東京近郊に、これほど多くの心洗われる名園があろうとは、いな、知っているのに行く気にならなかった とは残念なことであった。
 俳句を囓ったお陰で、遅まきながらも四季折々の美に触れることを、改めて感謝するこの頃である。
[了]

吟行日2005,11,10




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