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外房の地曳網



曳き網の舟突き上ぐる盆の波  
       
22年伊吹嶺誌11月号遠峰集


 私の住んでいる一宮町(尾張一宮と紛らわしいので、上総一宮と呼ばせて頂きます)は、外房九十九里の南端に位置する町であり、 以前この欄で海亀の産卵北限地として紹介させて頂いた。(令和二年六月号)
 今回は九十九里の伝統漁法である、地曳網について述べさせて頂く。
 上総一宮には、一宮町地曳網保存会があり、地曳網は町の指定文化財ともなっている。今では六月から八月に主として土日に観光地 曳網を中心に漁法の伝統を繋いでいる。しかし、保存会の方々も高齢者が多く、沖合への舟出しや漁獲した網の引揚げは地形の変化も あり、大変な労働となっている。
 
 九十九里の地曳網は昔から鰯などの雑魚中心であり、近隣の農家向けの肥料として需要が多かったようだ。今では勿論網元も無いわ けだが、当時は大変景気が良かったようで、個人住宅としてはかなり立派な日本家屋が元網元の家としてこの町にも残っている。
 この地曳網が廃れたのは、一番は安価な化学肥料の普及で採算が取れなくなったことであろうが、海の変化にも注目せねばならない。
 上総一宮の海岸も砂浜が激減して、曳き舟などの備品を置く小屋との間は、二,三bの崖となっている。舟の出し入れはここを通らね ばならない。獲物を運ぶのにもフォークリフトの力無しには無理となっている。
 この砂浜の浸食は人為的なものが大きい。津波除けの堤防や広大な九十九里に幾つかある漁港の護岸工事などが影響して、なだらかな 砂浜がどんどん減ってしまったようだ。海亀の産卵地もなだらかな砂浜が必要条件であるが年々産卵に訪れる亀が減少している。さらに は特産の蛤にも影響は出てくるのではないだろうか。
 この他にも地球全体の問題である温暖化による生態系の変化もある。南方系の魚や鮫などが多く掛り始めている。
 
 私が参加させて頂いた日にも結構大きな鮫が掛っていた。スナメリや海亀が掛ることもあるそうだが、これらは海に返している。
 便利に安全に暮すべく行われた政策がこのように大切な自然の遺産を食い潰しているのだ。人命を思えば一概に非難することは出来な いが、楽を求めて行って来た事が、次世代に大きな、やっかいな付けを負わせる事になっている。
 俳句を通し、微力ではあっても自然の恩恵の偉大さ大切さを広められればと思っている。




  春未だ舟屋の鎖鳴らす風   


  夏雲や子の声揃ふ地曳網


  峰雲や小鯵輝く網を曳く   
 
俳句三句はいずれも過去の遠峰集より引用



  峰雲や小鯵輝く網を曳く
22年伊吹嶺誌11月号遠峰集


  地曳網上げれば夏の鮫睨む


  かもめ舞ふ輝き躍る鰺の上




吟行日22年07月30日他
             
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