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外房七福神の寺巡り

黒雲の走る水面や牛蛙


伊吹嶺誌’16年12月遠峰集収載


   
 上総には外房七福神の寺があり、それぞれが祀られている。以前訪問の 東漸時(布袋尊)西善寺(福禄寿)、後述の行元寺 (毘沙門天)以外をお参りしようと、炎天の中を出かけた。一番近い観明寺 (寿老人)は近いうちに訪問することにして戻った。
 三光寺は上総国薬師如来霊場の二十二番札所でもある。道路の反対側には妙見堂があり、眼病に 効験がある妙見大菩薩も祀られている。本堂正面の弁天様は白木彫で艶めかしいお姿 だった。池では、牛蛙がのんびりと吠えていた。
すつぴんの白木弁天桔梗咲く
弁天の細き腕よ女郎花
秋風裡鈴の緒揺るる薬師堂
 次に伺ったのは法興寺。大黒天が祀られている。施餓鬼会の行われる寸前であったが和尚は気持ち よく、御朱印を書いてくれた。法興寺も上総薬師如来霊場二十一番札所である。ここの仁王像は 1572年の兵火による全山焼失にも生き残った物で鎌倉中期の作だそうだが、大変写実的で力 強い。杉の節くれが筋肉の上に異様な雰囲気を出している。本堂前の榧の霊木は400年超の大木 である。
 海辺実の動揺「里の秋」「蛙の笛」はここの参道からの眺めをモチーフに作曲されたもので、 最近は童謡の里として売り出している。
 杉の節顕はな仁王秋の風
 堂蔭へ流るる経や施餓鬼寺
 節榑の著き吽形蝉しぐれ
 遍照寺は恵比寿様の寺である。地図を見ると外房線で道が途切れているため入れない物と思い、 他の道を探しても行き着けなかった。再度先端まで行ってみると、遮断機などはない小さな踏切 があり、これを渡のが唯一の道であった。
遍照寺ではすでに施餓鬼が始まっており、話も御朱印も頂けなかったが、同じ一宮町にあるので 折を見て再訪の予定だ。
海を向く恵比寿の背なに晩夏光
夕日濃し恵比寿の竿に赤とんぼ
大西日真つ向に受け六地蔵
伊吹嶺誌’16年12月遠峰集収載
 東頭山行元寺(ぎょうがんじ)は昨年の秋に吟行した。七福神は毘沙門天が祀られ ているが、それよりも彫刻の世界で有名な寺だ。江戸城改修の彫り物頭領で、上野 寛永寺や芝増上寺の廟にも豪華絢爛な彫刻があったが、すべて第二次世界大戦で 焼失し、ここだけに残る高松又八の幻の彫り物が見られる。さらに「波の伊八」と 謳われ、北斎名画の原点の波の彫刻もある。写真に納めることは無理であるが、自分 の目で確りと見てきた。
爽籟や欄間に「伊八の波」高き
山門は豪華絢爛秋の風
白秋や獏の彫り物動くとも
吟行日2016年8月15日
      行元寺吟行は2015年10月10日
            この項了


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