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夏の二









負け蛍草の葉裏に光けり
合同句集「欅」収載



空には星の如くに幾千もの螢が光っていた。生と性の祭典である。 恋敵に打ち落とされたのであろうか。葉の裏に薄い光を放つ螢がいた。 哀れであった。
虎が雨遊女の墓の欠け茶碗
合同句集「欅」収載



大磯に延台寺と言う、曾我兄弟と縁の虎御前が祀られている。他の遊女の墓もあるが、この日は しとしとと雨が降っていた。誰が供えたのかひっくり返った欠け茶碗が哀れをさそった。
汽車道やノースリーブが闊歩する(2005,07)


宇根さんは映画が大好きである。それも洋ものに限るのである。
俳句のイメージが彼に白昼夢を抱かせたとすれば私はすごくうれしい。
ちなみに、このスター達はキャメロン・ディアス、ブリジット・バルドー、ジェーン・マンスフィールド、 レスリー・キャロン、マレーネ・ディトリッヒである。港にはいつも夢がある。
垣間見る空眩しかり山法師(2004,05)


山法師の花。花水木と近縁の種であるが、初夏の花である。最近は街路樹などにも見かけるようになったが、 山で出会うと特に感動する花である。鎌倉の切通しにある山法師にも感動した。白い花弁は実際は 葉の変形したものである。
青葉潮朱き鳥居の影揺らす(2004,06)


青葉潮とは、新緑の頃沖合に差し込んでくる黒潮のことである。句は宮島吟行の折のものだが、相模湾でも くっきりとそれと判る色の違いに気づくことがある。そんなときは、魚も釣れそうな気がしてくる。
青蜥蜴真昼間の日を弾きたる(2004,05)
伊吹嶺8月号「伊吹集」収載


最近都会でもたまに見られる、茶色のトカゲは本名「かなへび」という。青蜥蜴は体がてらてらと光る縞蜥蜴の 幼生である。といっても大きさはほとんど成虫と同じ大きさまで青っぽく光る。この爬虫類も最近はめっぽう少なく なったようだ。俳句では瑠璃(るり)とかげなどとも言う。夏の最中庭いじりなどしていると、重ねた鉢など動かす 時に飛び出してくる。向こうも驚いているのだろうが、こちらも驚く。
泉水の波紋ひろげて夕立来る(2003、07)
2003年伊吹嶺10月号「山彦集」入選


浜離宮の釣殿であろうか。休憩所にいた。空は暗くなり、風が吹いて来るとすぐに、広い池の先の方から 雨脚がどんどん近づいてきた。宇根氏の絵では、お金持ちの邸宅からの景と思うが、我が家にはそんな広い 庭も池もない。誤解の無いように。
そう言えばサマージャンボも当たらなかったな〜。
江ノ電の走りのどかや夏つばめ(2003,06)
2003年伊吹嶺9月号「伊吹集」収載


江ノ電は鎌倉と江ノ島を結ぶ単線の電車である。ある時は海沿いの路面を走り、ある時は人家の庭の木々を揺らせて 走る。まるでよそ様の庭内を走っているように。そして、あくまでもノンビリと。
夏の燕は子育ての真っ最中である。夏燕の動きを見ると、より江ノ電の走りが愛おしく感じた。
朽縄(くちなわ)と言ふは真(まこと)や田(たあ)の蛇(2004,06)
朽縄と言ふは真や田の蛇

長い藁縄が植田に捨てられていると思った。その縄が突然ずるずると動き始めた。なんと大きな青大将であった。



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