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九品仏浄真寺東京都世田谷区



来迎の面の菩薩へ秋日濃し



九品仏浄真寺とお面被り

 九品仏は自由が丘の近くにある、浄真寺と言うお寺のことである。
 私が子供の頃は大きな沼があり、ボートも浮かべていた。ザリガニやだぼ鯊釣りに良く自転車で来た、 子供にとっては素晴らしい遊び場であった。いつの間にか沼はすべて宅地と化し、今回行っても子供の時 の思い出らしきものは僅かに残る奥沢城址としての土塁と三つの古びた阿弥陀堂くらいの物しかなかった。
 この三つのどうに三体ずつの阿弥陀如来像が祀られており、この三堂が浄土とみなされ、本堂が現世と みなされて間に三十六間の白道の橋が架けられ阿弥陀如来始め二十五菩薩が来迎する様などを僧や信者 がお面を被り演ずるのが3年に一度の二十五菩薩来迎会(お面被り)である。
 東京都の無形民族文化財としても指定されている、九品仏の最大の祭事である。
 閻魔堂では甚句のようなものが謡われていた。また、白道を渡る僧の雅楽は越天楽のようだったが、寺院 でも演じられるのだろうか。今回は九十歳台の人から二十歳の人がお面を被ったそうだ。その他沢山の 可愛らしい稚児達も途中で暑さのためや写真を撮るパパを見つけたりで駄々を捏ねたりしていた。
 


   熱中症除けと配れり秋団扇


   来迎会待つ秋扇の人となり




   秋の蝉着飾る稚児の拗ね通し


   秋暑し面の菩薩のおぼつかな




   散華得んと波打つ人や秋の草


   飛蝗飛ぶ来迎菩薩の面高く




   住職の十念称名涼新た


   白道をよろめき跨ぐ秋の蝶




   師の詠みし仏足石や蝉の声
11年伊吹嶺12月号遠峰集収載句

   風あらず鷺草小さき白き羽根



   名号のゆかしき幟草茂る


   城跡の湿る土塁や夏落葉




   楸邨の飛蝗句碑の地水引草
11年伊吹嶺12月号遠峰集収載句

   晩夏光釣りせし沼の街となり
 この仏様は本堂から白道で繋がれた中央の上品(じょうぼん)堂の中央の阿弥陀如来様。普段は拝むことが 出来ない。白堂の途中では祭事の最後にここの住職が南無阿弥陀仏を十回唱える、十念称名で締めとなった。
 また、南無阿弥陀仏と書かれた旗は、この旗を外すと、下の草がその字を残して枯れるとかと書いてあった。
 本堂の横にある仏足石は栗田やすし主宰が
「雨降るもよし秋寒の九品仏」
「銀杏落つ仏足石の指の窪」

(句集海光より)と詠まれたところである。
 最初の写真の仁王門、載せてはいないが立派な彫り物の鐘楼、さらには加藤楸邨の句碑や墓など。銀杏や萱の巨木も 天然記念物である。
 この日も真夏日で熱中症を恐れて早々に自由が丘へ逃げ込んでしまったが、また吟行したいと思った。


吟行2011,8,16


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