民家園

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  釣瓶井の綱の湿りや白木槿
2007伊吹嶺12月号「伊吹集」収載


 8月に入って、関東地方も連日嘘のような暑さに見舞われている。
 生田緑地と言う名前に引かれて、少しは涼も取れるかと吟行仲間と集まった。
 生田緑地は2003年 10月に訪れて気に入っている吟行地であるが、以前にも記したように大変広大な土地に今回の 民家園の他岡本太郎美術館、青少年科学館などがある。今回も美術館の特別展だけは見たいと思った が民家園の吟行で時間一杯となってしまった。
 写真説明

トップは釣瓶井戸のある農家の庭。

柱時計のある豪邸の居間。機が何基もあった。

馬宿。馬と生活を共にする旅人の宿。12頭の馬が繋がれる土間、馬屋(まや)と言う。

下は商家の竈(かまど)で、竈神が祀られていた。


   馬宿の木戸に枝張る木槿かな
2007伊吹嶺12月号「伊吹集」収載

   秋灯し柱の時計動かざり

   かまど神祀りし土間の秋湿り



   粟の穂や罅割れ著き水車小屋

   藁屋根の土間に夜なべの糸車

   機の上に薄き埃や秋日濃し

 とにかく全国から保存に絶える古民家は全て集めたと思われるほどで、侍屋敷、旅籠、商家、豪農、 貧農、網元から漁師小屋、果ては芝居小屋(と言っても、国指定の重要有形民俗文化財で、船越の舞台 と言う歌舞伎の回り舞台を備えている。)まである。機織りなどの生活小物も良く集められており、 日本人の原点を見るような懐かしさを感じた。
写真上は水車小屋。
右は結構豪農な囲炉裏居間。
下は伊那部宿にあった、薬屋兼旅籠で屋根は石置きの板葺き。石が転がり落ちそうなほど蝉が 激しく鳴いていた。


   屋根石の転げ落つかと蝉しぐれ

   盂蘭盆や炉間に煤けし神の棚

   かなかなや仏間煤ける合掌家



   秋風や二人連れなる道祖神

   ひぐらしや二股道のみちしるべ

   精霊棚飾る仏間の煤ひかり



   陰もなし全く揺れぬ黍の畑

   空蝉の縋るるままに唐辛子

   藍甕の並ぶ土間這ふ蚊遣かな

 今回は盂蘭盆の間であったことから、精霊棚や竈の結界なども見られ、勉強にもなった。
 前回も今回も藍染め体験は出来なかったが、これも体験すれば面白いだろう。
 ひぐらしの鳴き声に後ろ髪を引かれつつ、向ヶ丘遊園駅前の句会場に歩を運んだ。
[了]
吟行2007、8、18

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