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勿来の関・五浦六角堂(福島県・茨城県)





蝉しぐれ勿来の歌碑に降り止まず



勿来の関

 会社勤めの息子が、一日休みが取れると言う。
 日帰りではあるが、久しぶりに車を転がしてみたいと言うので候補地を幾つか上げてみた。その 中で、往復の自動車道がそれほど混みそうもない場所として選んだのが、常磐高速道の利用可能な 場所であり、結果として息子はアクアマリンふくしまの水族館を提唱。私も近くに勿来の関があり、 昔から詩歌に詠まれ、一度訪れたい場所であったので大賛成となった。
 この近くには、美空ひばりの塩谷岬もあり、行ってみたいと思っていたが、場所を勘違いして、 五浦の方面に戻ってしまったので、ここは次の機会にした。


 勿来とは、来るな、の意味で、これより西には夷(えびす)は侵入してきてはいけないとの意味 で名付けられたようだ。
 勿来の関は白河の関、念珠ケ関とならんで “奥州三古関” と呼ばれており、不思議と万葉集を 初めとして、多くの歌人、俳人に詠み継がれてきている。勿来は来ないことの歌枕にもなっている。
 小野小町、紀貫之、和泉式部、源義家、西行法師などそうそうたる歌人が詠んでおり、その碑も あるが、ご当地まで来て詠んだ人物はほとんどいない。
 芭蕉の句碑もあったが、これは奥の細道で白河の関を越えた時のものであった。
 逆に言えば、それほど勿来の関は辺境のロマンをかきたてられる地であったのだろう。
 現在は関所跡の碑が立つ、石畳の道に多くの歌碑、句碑が建っている。桜も並木に植えられており、 突き当たりには勿来の関文学歴史館があった。
 残念なことに水曜定休日で入館出来なかった。たぶん付属の設備だろうが、平安貴族の館風な建造物 (写真)もあったが、これも締まっていた。
 ここより、30分ほど掛けて小名浜にある水族館「アクアマリンふくしま」に向かった。
   秋風や勿来の関のしるべ石

   歌碑幾つ勿来の径の油照

   炎熱や勿来の関の茂吉歌碑

アクアマリンふくしま

 旭川動物園の創意工夫の展示以来、動物園や水族館の展示にも各館による工夫が施され、楽しい 場所が増えてきた。
 もともと水族館が好きで、子供を連れて全国の水族館を出来る限り見てきたが、ここの大水槽にも 感激した。
 いわしの大群を泳がしているのだ。中層を泳ぐ鰹と常に上層にいるシイラを同居させているので、 鰯は自然の海洋のようになぶら(群)で逃げ回る壮観な回り灯籠となっていた。
 この他にも秋刀魚の群泳とか、海月やおおかみうお、さらにはとどなど大変な混雑の中ではあったが 楽しませてもらった。
 昼食は地元の魚料理を求めて観光地から離れた。



   大魚ゐる大水槽の群いわし

   雲の峰漁船の水尾に群かもめ

   水族館出て駐車場灼けゐたる





 上の写真で中段右の大きな魚、縦で小さく見えるのもいるが、が鰹。
 右上に一匹大きな影がシイラである。シイラ釣りはルアーやひっぱりで錘はごく軽めなものしか 使用しない。
 左は海月(くらげ)の群舞。

五浦の天心旧居

 国道6号を東京方面に小1時間走り、福島県から茨城県の五浦(いずら)に行く。
 観光客相手の店であったが、まず昼食を摂った。地元の赤メバルの塩焼き定食と麦かれいの煮魚 定食、ともに美味しい魚であった。
 五浦は岡倉天心が、この磯を愛し、ここに居を構えて横山大観や当時の日本の名ある画伯が当地 を訪れたとのことである。
 谷中にも天心記念公園があり、六角堂を模したものがあるが、今の芸大の前身の東京美術学校の 初代校長時代の住まいがあった場所とのことであった。
 天心についてはあまり良くは知らないが、日本の古美術の価値を見いだし、保存に努めた偉大な 人であり、もう少し勉強する必要がありそうだ。



   土用波とよもす五浦(いずら)六角堂

   秋風や磯の巌が波砕く

   黒潮の藍の深さや盂蘭盆会



   人棲まぬ玻璃戸に歪む晩夏光

   天心のまろき墳墓や草の秋

   天心の墓所に一陣秋の風

 行ってみれば、どこもかしこも良いとこだらけであるが、この五浦の海も風光明媚で立ち去りがたい 所であった。
 六角堂は茨城大学五浦美術研究所内にある。旧居もそうである。墓所は道を隔てた小高い丘に ただ一基祀られていた。
 近くには茨城県天心記念五浦美術館もあり、大観などの絵が見られるようである。
 さらに近くには長良川鵜飼の海鵜を獲る、唯一の場所や野口雨情記念館などもあることが判った。 しかし、遅くなれば東京へのUターン組の渋滞に巻き込まれかねない。
 またの機会を作ることとして、北茨城インターから常磐自動車道に乗った。
 幸い、大渋滞に巻き込まれることはなく、七時頃には帰宅できた。
[了]
吟行2007,8,15
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