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奧能登慕情(石川県)





短日や罅割れ深き千枚田

10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」


千枚田の風景

 俳句仲間と一泊ではあるが、能登輪島周辺を訪れた。
 結社誌「伊吹嶺」の伊吹集巻頭となったため、一五句程例月より余分に句が必要となり、その取材 にも都合が良かったのである。
 何度も書いているように、金沢や能登は現役時代に五,六年も住んでいたところであり、各所に 様々な思いでもある。
 もちろん当時は俳句を通して物を見る修練は皆無であったし、今回はただ漫然と見ていたものを 言葉に表現すると言う楽しみも加わり、有意義な旅であった。
写真は能登の千枚田、塩田およびその近くの風景、上時国家、朝市、民宿「漁火」、和紙工房など である。



   冬波の砕ける磯や夕日濃し
10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」
   冬ざれや濤打ち寄する千枚田

   初しぐれ黒く艶めく能登瓦
10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」




   塩田に千鳥歩きし跡ばかり
10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」
   冬濤の飛沫塩田句碑までも
10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」
   冬日さす能登の荒磯の舟溜り



   捨て船の折れし帆柱冬怒濤

   波寄する能登の浜辺に枯尾花

   昼灯す蜑の屋並やあなじ吹く
10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」




   冬座敷襖に金の平家紋
10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」
   奥能登の心字池や冬紅葉

   冬日和土間の窪みに緑苔




   民宿の床に冬濤響き来る

   冬羽織似合ふ親爺の能登言葉

   海女町に海女の注連あり小六月




   朝市の婆の元気や河豚を買ふ

   皺の手で大鰤捌く朝市女

10年伊吹嶺2月号「巻頭作家作品」
   朝市の婆が手で追ふ冬の蠅



   和紙工房残菊色を残しをり

   杉山に一基の墓や雪蛍

   和紙漉きの体験工房時雨来る

 能登には人を引き付ける何かがある。日本人の原点みたいなものが充満している。
 特に晩秋から初冬の能登は、漁村も農村も郷愁を誘うものがある。今回農村地区は僅かに、和紙工房 を尋ねたのみであったが、機会があれば再訪をしてみたかった。



   墓に植う柿に夕の日止めをり


[了]
吟行2009、11,12〜13
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