横浜港
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「伊吹嶺」東京吟行会
前回から約一ヶ月の9月4日,再度横浜港を吟行した。
暦の上では八朔。すでに秋であるが、当日も暑い日であった。
台風14号接近中とのことで晴れたり曇ったり、連中は上手い季語を探して佳句を拾われていた。
コースは桜木町よりバス「赤い靴号」に乗り日本大通りで下車、古い建物群を見て山下公園に散策。その後赤煉瓦 パークで休憩を入れ、汽車道経由で日本丸を見学と言うものである。
同じ場所ではあるが、季節がほんの少し変わっただけで、違う発見もあり楽しいものである。
日本大通りの銀杏並木は驚くほどのぎんなんの実を付けていた。見上げると少し黄色くなりかけて、それが空に 半ばとけ込みそうでもあり、翡翠の玉が無数にぶら下がっているようにも感じられた。
でも熟して落ちてくる季節はこの道はあまり通りたくないと思う。
また、旧英国領事館であった、開港資料館の横の植え込みには清楚な玉簾の花が群れていた。
玉簾は、南米原産で明治初めに渡来したと花の歳時記にはある。いかにも開港資料館に相応しい花に思えた。
季語は玉簾の花で三夏となっていた。
開港の街に銀杏たわわなり
玉簾咲きし開港資料館
野分雲水の女神の像覆ふ
赤い靴のブロンズ像に秋の風
離れ藻の寄する渚や雲の峰
山下公園にもあまり風は無かった。ベイブリッジの先には入道雲もあり青空も見えるのだが、頭上はしっかりと雲が 覆っていた。
噴水の中に立つのは横浜の姉妹都市、サンディエゴ市から贈られた水の守護神像である。うまく今回の台風の被害を 押さえて欲しいものと思った。
遊歩岸壁の下には猫の額ほどの渚がある。早くも海苔がちらほらと打ち寄せ秋の気配を感じさせていた。
ブロンズ像の赤い靴の女の子は相変わらず海の一点を眺めていた。その穏やかな海に実に多くの鰡(ぼら)が跳ねていた。
赤煉瓦倉庫広場では新旧アルファロメオが大集合していた。前回見逃した工作船の展示場はその奥の海側にある、海上保安庁 にあった。
日本側の制止も聞かず、全てを投棄した上で自爆した北朝鮮の船である。予想以上に大きな船であり、船名なども すぐに偽装できるようになっていた。引き上げることが出来なかったなら今でも日本近海に出没していたと考えると体は 冷え冷えとしてくるのであった。
汽車道には、前に来たときも名前の判らなかった花が色を違えて咲いていた。この花は
バーベナ
であった。和名は美女桜、花笠など。いろいろな園芸種があるようだ。
最後は練習船の帆船、日本丸の中を見学した。
甲板は椰子の実で今でも毎日磨かれているそうで実にきれいだ。司令塔のブリッジ、医務室の手術台、調理室の大鍋 など面白く、またいつ出帆しても良いような状態で保存されていることに驚いた。現在はドックの出口も塞がれていて この船が外洋に出ることは出来ないが、数年後には再航海をさせたいと運動している向きもあるようだ。
海の上はぜひ平和目的の、この船のような海の貴婦人の場であって欲しいものである。
この大きな舵輪は帆走時の舵で、一回転で1度方向を変えることが出来るとのこと。嵐などの急場は大変なことと 同情した。
句会後は有志でまた中華街まで戻り、「青葉」の薬膳料理で暑気払いをして帰宅した。
家にはいると同時に、もの凄い雨が降り出した。連中は濡れずに帰れたであろうか。
油凪ぐ海に鰡つ子跳ね止まず
冷ややかや偽装あとある工作船
汽車道やみなとに競ふ美女桜
雁渡し買ひ手決まらぬ埋立地
帆船に椰子の実転(まろ)ぶ大西日
05年「伊吹嶺」伊吹集12月号収載
帆船の大き舵輪や秋暑し
[了]
吟行日2005,09,04
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