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本郷界隈



青邨の銀杏を踏みて校を出づ

東京大学

 本郷界隈は、樋口一葉や石川啄木に縁の地が多く、以前に書いたものとばかり思っていた。
 そんなわけで、以前の写真を探したがどこかに紛れ込んでしまったものもある。
 俳句の季節と写真の季節が合わないものも出るかも知れぬが、書いてゆく。
 写真は10月から12月のものが多い。
 東大は赤門から入り、三四郎池、安田講堂、青邨の「銀杏散るまつただ中に法科あり」を実感して 正門に抜けた。
 赤門の黒い乳鋲をよく見ると銀杏の黄が映り込んでいた。
 
   赤門の鋲に映ろふ黄葉かな

   青空へ三四郎池の冬もみぢ

   堆き落葉踝(くるぶし)包みたり

   東大の鎮もる池や紅葉晴

菊坂

 正門前の横断歩道を渡って本郷6丁目に入る。ここには萬盛庵という、私の好きな手打ち蕎麦屋がある。
 さらに少し進むと、石川啄木が下宿にしていたという旅館太栄館がある。
 細い坂を下り、言問通りを左に、さらに左に折れると菊坂である。
 この辺り樋口一葉の生活の場であり、一葉が通った質屋とか、井戸などが現存している。
 菊坂は坂の町だ。この住居跡のそばに鐙坂、炭団坂など由緒ありそうな坂が続く。春日通りには、啄木が間借りしていた、 「喜の床」と言う床屋があり、今でも床屋がある。当時の建物は犬山の明治村に移築されている。

   夏衣干す一葉の露地狭し

   汗拭ふ一葉の井戸汲み上げて

   露地裏の風集まれり竹床几
   
以上3句2004年伊吹嶺10月号「伊吹集」収載


   質蔵の鉄扉に淡し冬日差

   一葉の井戸の軋みや冬ざるる

   一葉の終焉の地や銀杏散る

   本郷の急な石段枇杷の花    

 また一葉終焉の地は、言問通りを菊坂方面に左折せず、春日駅のある白山通りを右に入った、洋服の青山が入っている ビルのある場所だ。大都会の真ん中では、句碑や由緒書きだけでもあるだけましなのかも知れないが、銀杏並木の葉が 舞い落ちる中に余計寂しさを感じた。
[この項終わり]
吟行2006,12,16

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