三島U
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三島の秋(静岡県三島市他)



にわもみじらばあらわなるいけのそこ

池底の溶岩嶮し紅葉の火   楽寿園



ビュフェ美術館と井上文学館

 秋の三島に出かけた。初夏に三島の楽寿園から源兵衛川、梅花藻の里を巡り修善寺へと抜けたが、今回はバスの旅。箱根の 紅葉を車窓に見つつ、駿河銀行の創業者が集めたベルナール・ビュフェの2000点を有する美術館とその横にある、 やはり創業者と同窓で合った縁からの井上靖文学館をまず訪れた。
 ビュフェについては何も知らなかったが1928年生まれで1999年に71歳で死去したフランスの画家である。
 黒く太い線が印象的な画風だ。生きた時代が第二次世界大戦の最中でもあり、その影響かとも思うが水墨画に近い色数 の少ない絵が多かった。  サガンとも親交が深かったようだが、実存主義の匂いの強い画家だ。  井上靖はよく知られた作家であり、多くを語る必要はないが、北海道旭川に生まれ、天城湯が島で育つ。ために沼津中学 時代があり、金沢四高、京都帝大と進んだ。卒業後新聞記者を経て作家で一本立ちした。この文学館には氷壁のザイルなどの 参考資料の他、多くの生原稿などが展示されていた。
足柄SEの紅葉

   錦秋や真白き富士のハイウエー

   低く飛ぶ鳶の羽音や冬立つ日

   団栗拾ふ井上靖文学館

ビュフェ美術館から井上文学館への入口

   日短か黒線太きビュフェの絵

   冠雪の富士に寄り添ふ昼の月

   黄落期橋桁白き高速道

楽寿園と柿田川・三島大社

楽寿園の菊花展  楽寿園は前回同様、池には全く水がなかった。
 溶岩だらけの庭紅葉は、それなりに見応えがあったが、美味しい水、綺麗な水で有名な三島であるだけに、水が涸れてしまった 池は不気味に思われる。
 今回も源兵衛川を下り、佐野美術館の隆泉苑で遅めの昼食を取り、梅花藻の里(なんと一年中梅花藻は咲くのだ。)、 柿田川を見学。最後に三島大社に寄って帰った。
 大社には
  どむみりとあふちや雨の花曇
と芭蕉の句碑があった。大きな楝の木が鈴なりの実を付けて風に揺れていた。
 おそらく芭蕉の見た栴檀の木だろうと感無量で見上げていた。




   菊花展見事に菊の平等院

   梅花藻の里てふ冬の川清ら    

柿田川源流



   湧水に噴く穴幾つ秋深し

   川の辺の木々騒がせて神渡し    

三島大社の楝の実



   暮れなづむ柿田湧水鳥渡る

   楝の実弾む緑青葺の屋根    

[終わり]
吟行2008,11,18
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