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  冬の晴峠に全戸見ゆる宿(しゆく)
  お地蔵の背山に燃ゆる実南天

 馬頭観音のある峠径には、冬苺が沢山生っており、子供に返って口に頬ばった懐かしかった。
 また、食べられないが野葡萄も宝石のように輝いて、我々の目を楽しませてくれた。
  野ぶだうの宝めく径馬頭尊
  日当たれば甘しと摘めり冬苺
  冬苺含めば思ふ幼き日

 今回初めて訪れたのが吐月峰柴屋寺である。今川氏に仕えた連歌師宗長ゆかりの寺で、借景の庭園は 国の名勝と指定され、特に竹林から月が出る景は優れたものとされているそうだ。一休和尚の鉄鉢や足利 義政から貰った文福茶釜など寺宝も見せて貰った。
  禅寺の小さき池の()雪ぼたる
  草庵に筧を伝ふ冬の水   

 丸子宿の丁子屋の少し上に(いざり)地蔵と無縁墓 があると言うので見に行った。無縁墓は寄せ墓で、この写真でも見えるが田平子の返り花が一本咲いていた。 田平子は春の七草の仏の座である。
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