錆来す地蔵の鈴や冬の蜂
田平子の返り花咲く無縁墓
丁子屋は四百年の伝統を持つとろろ飯屋である。私も確か四度目であるが、東京のとろろ飯屋とは比較
にならない美味しさがある。芭蕉や広重や十返舎一九の面影を感じられる店構えも嬉しい。前の道は一号線
の東海道である。
ここで第一回の句会と食事を堪能して、ホテルに戻りさらに句会。明日は八時日本平へと向かう。
かつこんで句会始めんとろろ汁
久能山東照宮
日本平のハイウェイに入ると富士はおろか何も見えない。中学生の旅行以来何度も来ているが、冬の嵐に
逢ったのは始めてのことだ。それでもロープウェイも動き、夏の台風に荒れた地獄谷は真下に眺められた。
霧ごめの自動車道や九十九折
地獄谷のみ見ゆ霧のロープウェイ
丈の高い階段をようように上がれば雨はさらにきつく、遠くはあるが雷鳴まで聞こえる。それでも連衆
は句帖と傘を離さずに何かを見ている。私もカメラを上に向けて雨粒がレンズに入るのを嫌いつつ、ペン
も走らせた。