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鷺山吟行集          武藤宏樹

   
東禰李古(とねりこ) 昭和十八年九月発行
          第十九卷 第五号 九月号
     同人七名謀りて大宮に集まり近在の鷺山に至る。・・
  鷺山の森を埋めて鳴く鷺のしわ嗄れ聲は田の面に響く

  鷺山の森を離れて飛ぶ鷺は白帆ひとひら漂ふごとし

  鷺山の樹の下道を吾が行けば生臭き香の鼻をつきくる

  そのかみの鷺大盡の廣庭に影を落して白鷺はとぶ

  低く降り枝による時羽ばたきて躊躇ふごとく白鷺とまる

  二羽三羽ひとつの枝に集れば落ちなむとして子鷺羽ばたく

  木漏日の散らばふ枝に居る鷺の脚ほそくして浮ぶが如し

  秀つ枝より鷺の落せし白き羽みきに觸れつつ吾が前に落つ

  墓原に木漏日さして其處此處に鷺の落せし糞白く積む

  夏雲のRふ空を鷺とびて一筋の光目路に残しぬ

  移動する本能もちて秋たたば鷺は一夜に渡りするとふ

 *注 光リ 他に編集後記。
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