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反古集          武藤宏樹

千日草子   第三輯   昭和二十二年十一月発行


  解剖圖ひもときゆきて脳髄の白きかたまりが脳裡を去らず

  眞實にさびしさみちて死にたらむ有島武郎芥川龍之介

  人に汗(まみ)れほとほと死にて降りたちし
                ホームにしばし吾は息つぐ

  大衆の一人の吾もこの日頃世にそぐはざる疑のあり

  程々に過ぎこし年を顧みてむしろ悔いつつ生徒らに告ぐ

  送別の今日をえらびて生徒らが吾にきかしむ輕音樂會

  百圓の金を集めて吾が前を逃ぐるが如く生徒らは去る

  新しき教育ここに始まれり机なき二百五十の生徒と吾と


 注 光リ 本号には他に「貝殻瑣語」(二)短歌とその周辺
            「歌壇寸評」-短歌往來八月號の作品-
      があった。
      歌誌「千日草子」は、この一冊しか残されていな
      い。
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