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初夏の佃島東京都中央区
入梅や運河に揺らぐ常夜灯
2008伊吹嶺9月号「伊吹集」収載
吟行会の連衆と佃島に吟行した。
何度も訪れる地であるが、私の子供の頃の東京の風景を残している数少ない一角である。
一回り、国立競技場ほどの広さで、こんなに何遍も行けば俳句の種も尽きるかと思うが、意外と
新しい発見があるのが楽しい。
湯島天神に続き今回もテレビロケのクルーに会った。背高のっぽの外人とイランの女性等の3人
連れで、仲間もインタビューされていた。
酷い雨は終わっていたが、走り梅雨の寒い日で思わぬ吟行日和ではあった。
前回は梅雨の頃と師走であるが、こちら
もご覧頂ければと説明はさけた。
雨脚の著るき運河や芥子坊主
五月雨や佃の路地に地蔵の灯
2008伊吹嶺9月号「伊吹集」収載
葦簀張る舟宿潮の香りくる
青梅雨や勢ひ豊かに蕃茉莉
傘影に金魚潜けり石の鉢
禰宜の家が祭浴衣を売つてをる
目に青葉かたちほど良き鰹塚
荒梅雨の川ゆく船や多佳子の忌
桜の実標一つの渡し跡
聖路加の高き病棟梅雨の冷え
かはほりや佃の路地に豆腐売
2008伊吹嶺10月号「伊吹集」収載
5月29日は橋本多佳子の没日であった。
私が今習得しようとしている、即物具象の句とは違い、思い入れの強い句であるが、私の胸を打つ
句がもの凄く多い。
真似しようとは思わないし、出来もしないが好きな女流俳人であることは疑う余地もない。
隅田川とは関係ないかも知れぬが、梅雨濁る川を上る船に多佳子を重ねてしまった。
雪はげし抱かれて息のつまりしこと
梅雨の藻よ恋しきものの如く寄る
早瀬ゆく鵜綱のもつれもつるるまま
曼珠沙華咲くとつぶやきひとり堪ゆ
雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 橋本 多佳子