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鎌倉の道 秋



秋ばらの輝き満てり文学館


収玄寺

 久しぶりに鎌倉に吟行した。
 いつもは地下鉄で横浜に出て横須賀線で鎌倉に向かうのであるが、藤沢から江ノ電に乗りたくて、中央林間から小田急 を利用、藤沢に出た。
 売店のおばさんに勧められて、朝取れ鰺鮨を弁当に仕込み江ノ電に乗った。
 いつものことではあるが、家々の軒を掠めて走る江ノ電は乗っているだけで楽しい。
 秋晴れのこの日は干された蒲団が目の前を過ぎった。腰越を過ぎての海には、浜はさすがに秋色著しかったが、波間に 大波を待つサーファーの頭がいくつか見られた。
 電車にぶつかってきそうな、藤袴や薄を見ている内に、目的地の長谷に着いた。今回は鎌倉文学館で句会を催すので、 吟行地は長谷周辺の収玄寺、長谷観音、文学館とした。
 最初の収玄寺は、長谷観音に向かう道の駅からすぐ左側だ。小さな日蓮宗の寺だが、実に花が豊富である。草木ともに 大変な種類だ。全部に名前がないのが残念。右の写真もサルビアの種類だろうがこれも解らない。
 上は、緋合歓(ひねむ)また紅合歓(べにごうかん)とも言うらしい。合歓の木のように大きくはならないようだ。冬の 花だそうだが季語ではない。  芙蓉や酔芙蓉、ベニバナサルビアメドーセイジ姫蔓蕎麦などがあった。

   江ノ電の車窓の左右に蒲団干す

   サーファーをまだ浮かべゐし秋の波

長谷観音

 長谷観音で知られる長谷寺は、大仏とともに長谷の代表的な観光スポットである。
 大きな木造の観音様や輪蔵のまわし堂、崖下に掘られた弁天洞や千体地蔵などの宗教施設も見応えがあるが、なんと 言っても境内からの相模湾に展ける眺望がすばらしい。
 さらには季節の花も実に良く手入れされている。初夏の紫陽花や花菖蒲、岩煙草など鎌倉の道の第1回に紹介しているが この秋は、冬桜、秋明菊藤袴などが目立った。冬桜の横には、梅擬の実が真っ赤になっていた。
 紫陽花の頃はずっと上まで登れるのだが、今回は適わなかった。
 長閑な鳶の鳴き声を聞きながら、海を眺めて昼食を摂り句の推敲に励んだ。
はせでらやいけにこぼるるうめもどき

   人気なき秋の汀や鳶の笛

   輪蔵の剥げし把手や冬さくら

   千体の地蔵を埋め菊の供花

   暮れ泥む池に零るる梅擬

鎌倉文学館

 鎌倉文学館は、江ノ電長谷駅と由比ヶ浜駅の中間にある。どちらからでも10分程度で車寄せのある玄関に到着する。
 鎌倉文学館はもともと前田侯爵の別邸であった。昭和58年に鎌倉市に寄贈され、文学館として使用されている。
 明治時代より鎌倉は漱石始め多くの文人がかかわってきた町であり、彼らの資料が多く集められている。
 この日は「芥川龍之介の鎌倉物語」と言う特別展が開催されていた。
 ゆっくりと展示物も見たかったが、今回は諦めてこれも名物の薔薇園を見た。
 三方山に囲まれた青い洋館の高みに鳶が舞っていた。

     洋館の青き甍や秋深む
[了]
吟行2006,10,21

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